アート&ミュージックフェス『MUTEK.JP』が示した未来ーージェイ・コウガミ氏が新規性を解説
11月3日~11月5日、日本科学未来館にてデジタルアート&エレクトロニックミュージュック・フェスティバル『MUTEK.JP 2017』が開催された。『MUTEK』は2000年からカナダ・モントリオールでスタートしたもので、メキシコシティー、バルセロナ、ブエノスアイレスなど世界中で展開。2016年に東京でも『MUTEK.JP』が立ち上がり、日本では今年が2度目の開催となった。リアルサウンド編集部ではレッドブル・ミュージック・フェスティバル東京とのコラボで行われた最終日、5日のイベントを取材。さらに、モントリオールでの『MUTEK 2017』を取材した、海外シーンにも詳しい音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に、イベント内の主要な作品について解説してもらった。
まず編集部では、VRシューティングゲームソフト・Rez Infiniteをプレイする模様を、通常プラネタリウムに利用されているドームシアターに投影し、100人で同時にゲームを体験する特別パフォーマンスを体験した。同パフォーマンスはゲームのプロデューサー・水口哲也氏も参加し、全5回を実施。6月に開催された「VR to Dome 実験:Rez Infinite」に続く第二弾イベントとなった。第一弾イベントも見ていたというジェイ氏は、前回からの変化について以下のように教えてくれた。
「このイベントは、100人で一緒にゲームプレイに没入できるというリアルイベントでのソーシャル体験が特徴です。ゲームプレイヤーがいて、360度ドームに映像が投影されるという仕組みは第一弾と変わりません。しかし、機材のスペックが圧倒的に良くなっているので、キャラクターやオブジェが動く際の色彩の変化が第一弾より繊細に映っていました。プレイヤーがその場でゲームをプレイしているので、各回で映し出される映像が全て異なるのも面白いところですね」
さらにプラネタリウムのようなドーム空間は、ライブにおける使い方にも新たな可能性を持っているという。ジェイ氏はカナダ本国での取り組みについて以下のように語る。
「360度スクリーンのある空間では、一般的なライブ会場とは異なる感覚で映像や音を体感できます。カナダ本国の『MUTEK』でも、プラネタリウムのドームを使ったライブパフォーマンスのプロジェクト「SATosphere」が毎年用意されています。今回日本ではゲームをテーマにしたパフォーマンスでしたが、カナダではドーム仕様の特別作品を制作したアーティストが出演して、グラフィックをドームに映しながら360度にスピーカーを置いて音楽をライブ演奏したり、オーディオビジュアルに特化した実験的なパフォーマンスを行うなど、コンセプトも様々。ミュージシャンだけでなく、エンジニアやソフトウェアのプログラマ、ハードウェア・エンジニア、ビジュアルアーティストなどが関わり、密接に絡み合って完成するので、トライ&エラーを繰り返して作っていく、実験的な要素が強いです」