アート&ミュージックフェス『MUTEK.JP』が示した未来ーージェイ・コウガミ氏が新規性を解説

『MUTEK.JP』が示した未来とは?

 続いて編集部が体験したのは目玉イベントの一つ、小室哲哉と脇田玲によるオーディオビジュアルインスタレーションプロジェクト「Tetsuya Komuro & Akira Wakita」。脇田による大陸や海を連想させる映像がスクリーンに映し出され、小室がDJとしてエレクトロなサウンドを鳴らしていたのが印象的だった。これについてジェイ氏は「アートと対話するもの」として、同プロジェクトの新しさを解説した。

(c)Suguru Saito / Red Bull Content Pool

「このプロジェクトは、オーストリアのアートフェス『アルスエレクトロニカ・フェスティバル 2016』で展示されていたアートインスタレーションのアップデート版です。機材や施設の問題で日本では展示できない大掛かりなものでしたが、今回ようやく日本で初披露されました。脇田玲さんが開発したソフトウェアを使って生成した映像を出力して、小室哲哉さんが自由に音楽をライブ演奏でつけていく。これがどちらもリアルタイムで行なわれていたんです。“小室哲哉さんのDJにVJがついている”というイメージではなく、“アートパフォーマンスの中に小室さんがいる”、“映像を小室さんが解釈している”という形。ステージ後方のスクリーンに流れる映像からミュージシャンが感じたものをリアルタイムで表現することで、いつものライブとは違って予想不可能な変化が起こり、オーディエンス側の想像力は膨らみます。一方で、音楽があるからこそビジュアルがよりアーティスティックになり、新たなインスピレーションが生まれる。このバランスが非常に大切です。こうした音楽とデジタルアートの作り方は、想像力や考え次第で解釈が無限に拡がるというのが興味深いところです」

(C)Yusuke Kashiwazaki / Red Bull Content Pool

 このほかにも会場ではYoung Juvenile YouthやDE DE MOUSEによるパフォーマンス、冨田勲に捧げるインスタレーション・Claire de Lune for Isao Tomitaなど、様々な企画が行なわれた。音楽やテクノロジーだけでなく、アート、プログラミングなどの新たな形を示した『MUTEK.JP』。リアルタイムでビジュアルやサウンドが相互に作用して生まれる新たな表現や、多くのオーディエンスが同時に体験できることが、今後のエンターテインメントにとって欠かせないと予感したイベントだった。

(文=村上夏菜/メイン写真=(C)MUTEK.JP / Ryu Kasai)

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