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- 2017.04.23
今月もエレクトロニック・ミュージックの新作の中からいくつかご紹介します。
異端のDJ/トラックメイカーでありテン年代以降の新感覚テクノを代表するダレン・カニンガムによるユニット、アクトレス(Actress)の3年ぶり5作目が『AZD』(Ninja Tune/Beat Records)。今作はこれまでの荒々しいローファイ感はやや後退して、ダブステップ以降のUKベース・ミュージックとデトロイト・テクノとシカゴ・ハウスの黒い伝統を繋ぐような、緻密で大胆なミニマル・テック・ハウスを展開しています。派手な展開も起伏に富んだアレンジもなく、ただひたすらアーティストの内面を深耕するようなディープな音響アートは、なにより圧倒的に美しいですね。
デトロイト・テクノの巨匠カール・クレイグが、フランスの指揮者フランソワ=グザヴィエ・ロト率いるレ・シエクル・オーケストラ、そしてダンス・ミュージックとクラシカルを自在に往還する鬼才ピアニスト、フランチェスコ・トリスターノと共演し、クラシックとテクノ〜エレクトロニック・ミュージックの融合を目指した新作が『Versus』(InFiné/Planet E/Beat Records)。この分野ではジェフ・ミルズをはじめ既にいくつもの成功例がありますが、先行者の音をよく研究して、より深くダイナミックで多様なレベルでのジャンル折衷が成し遂げられています。後半の盛り上がりは素晴らしい。海外ではライブもやっているようなので、ぜひ日本でも実現してほしいですね。4月28日発売。
UKブリストルのエレクトロ・デュオ、ファック・バトンズのメンバー、ベンジャミン・ジョン・パワーによるソロ・プロジェクト、ブランク・マス(Blanck Mass)のセカンド・アルバムが『World Eater』(Sacred Bones/Hostess)。ファック・バトンズよりもノイジーでインダストリアルなハード・エレクトロですが、無機的・暴力的な荒々しさというよりも、ソウルフルでエモーショナルなメロディと緻密な音像、ドラマティックな高揚感があるのはファック・バトンズ同様です。聴き応え十分の力作。ライブもやってるようなので、来日を期待したいです。
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