森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.45
“ギターと歌”の表現をいかに突き詰めるか ベボベ、サンボ、グリムら5組の新作を聴く
どれほど機材が進化しても、“テクノロジー=楽器”という概念が普及しても、ロックバンド、シンガーソングライターを中心に”ギターと歌で何ができるか?”は、今も昔も変わらずに興味深いテーマであり続けている。今回はギターと歌の関係性を突き詰め、優れた表現に結び付けているアーティストの新作を紹介しよう。
昨年3月にオリジナルメンバーの湯浅将平(Gt)が脱退し、小出祐介(Vo/Gt)、関根史織(Ba/Cho)、堀之内大介(Dr/Cho)の3人体制となったBase Ball Bear。その後のライブ、ツアーはフルカワユタカ(ex.DOPING PANDA)、石毛輝(lovefilm/the telephones) 、田渕ひさ子(toddle/LAMA)、ハヤシ(POLYSICS)、弓木英梨乃(KIRINJI)といったゲストを迎えて行われたが、新作『光源』は3人だけで制作されたという。“ギター2本、ドラム、ベースによるギターロック”という従来のフォーマットから外れたことで、その表現は大きく更新された。軸になっているのは、小出のギター・カッティング。そこに関根のベース、堀之内のドラムが有機的に絡み、立体的なグルーヴを生み出しているのだ。バンド全体のリズムが強化されたことで、ブラックミュージック、エレクトロなどの要素がさらに深く反映されていることも本作の特徴だろう。
サンボマスターの9thアルバム『YES』先行シングル『オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで』。シンガロング必至のコーラスから始まるこの曲は、パンクロック直系のサウンド基軸にしながら、ブラックミュージック経由のタメが効いたリズムアレンジ、ソウルミュージックのテイストを感じさせるコードワークなどがひとつになったアッパーチューン。<こんな世の中に誰がした><誰もキミの魂は売り飛ばせないもの>という切実な思いを凝縮させた歌も素晴らしいが、それを支えているのはやはり山口隆のソングライティングの確かさ。特にソウル、ジャズ、ファンク、スカなどの幅広い音楽を肉体的に捉えた山口のギターは、ここにきてさらに深みを増している。1stアルバム『新しき日本語ロックの道と怒り』(2003年)以来、日本語によるロックの歴史を踏まえた表現を追求してきたサンボマスター。その音楽は次作『YES』によって新たな高みに達するだろう。
2ndアルバム『Next One』(2016年7月)に関するインタビューで松尾レミ(Vo/G)は「次はサイケデリックをやりたい」とコメントしていたが、まさに有言実行。3rdミニアルバム『I STAND ALONE』でGLIM SPANKYは、ディープなサイケデリアを現代的なロックミュージックとして見事に体現してみせた。それを象徴しているのが1曲目の「アイスダンドアローン」。エレクトリック・シタールのテイストを取り入れたギターサウンドと“周囲に流されず、自分の足で立て”というメッセージを含んだ歌がひとつになったこの曲は、“孤高を恐れず、自分たちがやりたいことをやる”という2人の姿勢に直結していると言っていい。亀本寛貴(Gt)のメロディックなギタープレイと松尾のブルージーな歌声のエモーショナルな絡み具合も素晴らしい。