“ギターと歌”の表現をいかに突き詰めるか ベボベ、サンボ、グリムら5組の新作を聴く

 高橋優といえば“アコギをかきむしりながら感情豊かに歌い上げる”というイメージを持っているリスナーも多いと思う。映画『クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』の主題歌として書き下ろされた「ロードムービー」も、真ん中にあるのはやはりギターと歌である。大型タイアップだけあって、アレンジは作り込まれているし、イントロからピアノ、ストリングスなどがふんだんに使われているが、最後のサビに向かう<繋がっているよ この空の下/繋がっているよ おんなじ星を>というパートでは、アコギと歌の弾き語り状態になるのだ。壮大なバラードナンバーであるこの曲は“ベーシックなスタイルをしっかり持っているからこそ、どんなアレンジにも適応できる”という、優れたシンガーソングライターの好例だと思う。

高橋 優 - 「ロードムービー」MV short ver.

 デビュー10周年を記念して制作された、長澤知之の2枚組アンソロジー・アルバム『Archives #1』。「あんまり素敵じゃない世界」「バベル」などの代表曲、ライブテイク、未発表テイク、新曲も収録され、長澤知之の“これまで”と“これから”が体感できる作品に仕上がっている。その独創的なソングライティング、ボーカリゼーションに加え、ギタリストとしての才能を実感できるのも本作の魅力だろう。彼のギターの特徴は、常に歌に付随し、ボーカルラインに対するカウンターメロディとして機能していること。ALでもサイケデリックかつダイナミックなギタープレイを聴かせてくれる長澤。本作によって、ギタリストとしてのセンスの高さにも注目が集まることを願う。

長澤知之 / 蜘蛛の糸

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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