cinema staffはインディーズ時代の名曲をどう更新した? 『前衛懐古主義 part1』東京編レポート

シネマが更新したインディーズ時代の名曲たち

 cinema staffが、『前衛懐古主義 part1』の東京編を10月17日に恵比寿LIQUIDROOMにて行った。同ライブは、インディーズ時代の音源『document』(2008年)、『Symmetoronica』(2009年)、『Blue, under the imagination』(2010年)、『水平線は夜動く』(2011年)でセットリストを構成するという企画で、東名阪の3会場で開催。東京公演当日は月曜にも関わらず多くの人が詰め掛け、cinema staffとしては初めて恵比寿LIQUIDROOMの会場をソールドアウトさせた。

 定刻から10分遅れでステージに登場したメンバーを、客席は温かな拍手で迎える。4人が一斉にライブの始まりを告げる音を鳴らし、cinema staffが第1作目としてリリースした『document』の1曲目「AMK HOLLIC」からライブをスタートした。

 cinema staffのライブの名物ともなっているのが、三島想平(B)や辻友貴(Gt)のアグレッシブさを超越した演奏スタイル。「AMK HOLLIC」で辻は爆音のノイズを鳴らしながら頭の後ろでギターを演奏するなど、序盤から派手なパフォーマンスで会場を沸かせた。変拍子を含む強烈な楽器のサウンド、飯田瑞規(Vo, Gt)の伸びやかな歌声、三島の壮絶なシャウトが、絶妙なバランスで交錯して耳に届く。続けて披露した「チェンジアップ」「想像力」では、四つ打ちのリズムに合わせ観客が踊り、「ワン、ツー!」の掛け声で始まった「第12感」まで大きな盛り上がりを見せた。

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 MCで飯田が「昔はここでやることなんて無理だった。長いことバンドやってきて良かったなと噛みしめております」と感謝を伝えたあと、『Blue, under the imagination』から「バイタルサイン」「Truth under the imagination」と飯田と三島の歌声で魅了する楽曲を披露。バンド全体の生み出すグルーヴが、歌詞の意味を鮮烈に伝える役割を果たしている。一瞬静まりかえった会場に、しっとりとした出だしから始まった「サイクル」。間奏で迫り来るようなドラムのビートを久野洋平(Dr)が鳴らした直後、飯田が<息が止まりそうで不安なんだよ>と歌唱した。また、イントロから穏やかな曲調で始まり、飯田のささやくような歌声を、三島のシャウトと激しい演奏が追いかける「妄想回路」では、直後に飯田が<叫ぶように 囁くように>と歌う。2人の歌声とそこで鳴る音が、歌詞の世界観をより鮮明に表現しているように感じた。

 飯田は、「(インディーズ時代の楽曲を聞いていた)当時のことを思い出しながら聞いてくれたら」と観客に語りかける。久野は「俺も浸りながら演奏してたけど、当時、飯田くんこんなやつじゃなかったなって(笑)。MCとかしてなかったもんね」と、当時を懐かしむ様子も見られた。

 その後、2011年にリリースしたインスト楽曲「水平線は夜動く」を真っ白なライトに照らされたステージで披露。cinema staffはデビュー後にリリースした4thアルバム『blueprint』の「陸にある海」、5thアルバム『eve』の表題曲と合わせ、インスト楽曲を3曲リリースしている。最近のライブではあまり披露されない同曲の演奏中は神秘的な空気が漂い、観客はステージに釘付けになっていた。

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