西廣智一がバンドの「本気」を解説
cinema staff、勝負作『blueprint』をどう広めるか? 斬新なプロモーション展開を読む
cinema staffのニューアルバム『blueprint』と、同作に対するプロモーション展開が非常に面白いことになっている。
アニメ『進撃の巨人』のエンディングテーマに採用されスマッシュヒットを記録した『great escape』、それに続くアルバム『Drums,Bass,2(to) Guitars』と、それまでのリスナー層からより幅広い音楽ファンに向けてポップを追求したバンドサウンドを聴かせてくれたcinema staff。前作から1年ぶりとなる新作『blueprint』ではそのポップさをより進化&深化させ、なおかつ聴き手の体に入って行きやすい言葉(=歌詞)が印象的な、バンドにとってターニングポイントとなりそうな1枚に仕上がっている。この自信作を、前作『Drums,Bass,2(to) Guitars』で届けきることができなかった層にまでどうやって伝えていくか……そのためにcinema staffが仕掛けたプロモーション展開が、今回は今まで以上に力の入ったものになっており、非常に興味深い。
近年CDがなかなか売れないとアーティスト / レーベル側が嘆くような現状が続いているが、この現実を打破しようといろんな展開を仕掛けるアーティストも少なくない。テレビや新聞、雑誌など昔ながらの大々的なものからネットメディアを最大限に活用するケースまで、その内容はさまざま。「テレビや雑誌はもう古い」などと言いながらも、露出した分だけ結果を残すアーティストも少なくなく、逆にネットメディアでも無料 / 有料含め無数の展開が存在するが、そのすべてがうまくいっているとは言い難い。アーティストとの親和性も大きいだろうが、今回のcinema staffのケースは長期にわたるもので、「今度はどんなコンテンツが?」と公開されるたびに次の展開が楽しみになるようなものが多かった。
まず彼らの場合、アルバム発売日の約2カ月前にあたる、2月25日より展開を開始。アルバム発売情報&アートワークの解禁と同時に、同作のオープニングトラック「陸にある海」をSoundCloudにて先行フル公開したのだ。しかもこの曲がピアノを軸にしたインストナンバーということで、ファンの間で物議を醸し出した。まずはファンの間でざわつかせることに成功した彼らは、続いて3月1日に「#シネマのブルプリ」Twitterキャンペーンを開始。アルバム『blueprint』に対する期待や想像、メンバーに対するメッセージなどをハッシュタグ「#シネマのブルプリ」を付けてツイートするというもので、投稿者には抽選でcinema staffスペシャルグッズ“飯田賞”、“辻賞”、“三島賞”、“久野賞”が各1名ずつにプレゼントされる。ファンのツイートを通して、cinema staffに疎い人たちの目にも「#シネマのブルプリ」というハッシュタグは目に止まることになるだろうし、結果としてはこれもTwitterを使った宣伝と言えるだろう。