石井恵梨子の「ライブを見る、読む、考える」 第3回:THE NOVEMBERS
THE NOVEMBERSのライブから目が離せない理由 「タフさ」と「品性」から読み解く
最近、THE NOVEMBERSのライブから目が離せない。もちろん面白いバンドやいいバンドはたくさんいるが、ことライブ活動において気になるのが彼ら。自主企画イベントで鮮烈な動きを見せている。しかも短期間で集中的に強い発信を続けている。
その自主企画イベントの名前は『首』という。MEAT EATERSの曲名から取ったものだ。2006年にスタートしてから不定期に続いてきたが、結成11年目の今年に入って急激に活性化。小林祐介(ボーカル&ギター)は「本当に自分がそのイベントをずっと見ていたいかと思えるか」という一点に焦点を絞り、共演したい相手を選んでいった。
まず5月の『首 Vol.10』にはBorisとKlan Aileen。6月の『首 Vol.11』にはMONOとROTH BART BARONが招かれた。それぞれ世代はだいぶ違うが、強烈なオリジナリティを持ち、その音に壮大なロマンや野心を託すオルタナ界の才人たちだ。僕たちの志もまた同じところにあるのです、という小林の声がはっきりと聞こえてくるようだった。また、7月にはArt-Schoolとの共催、8月に入ると『首』はacid androidとの共同企画、ゲストDJに石野卓球という異種交流パーティーに発展していく。だが居場所が違っても根っこは同じだ。卓球は80’sニューウェイヴ/ボディ・ミュージック縛りのDJで沸かせ、最後に高松(THE NOVEMBERS)とyukihiroはゲストの土屋昌巳らとデペッシュ・モードのカバーバンドでプレイ。憧れの先輩たちと共演できた喜びはもちろんあるだろう。自分たちもニューウェイヴをルーツに持ち、その精神を受け継ぐ存在でありたいという自覚も同時にあったはずである。
要するに、タフになったのだと思う。THE NOVEMBERSが所属レーベルを離れて独立したのは2013年のことで、以降はニューウェイヴ/ポストパンク方向に振り切った力作が続いているが、音は精神とリンクする。気の合う同世代と集まって、なんとなく音楽性の近しいバンドでつるむことにも飽きるだろう。もっと広い舞台に立ちたい、どんな相手でも怯まない自信を持ちたい。近年のTHE NOVEMBERSにはそういう野心を強く感じるし、以前はどこか芯が弱かったライブもどんどん威風堂々としたものに変わっている。だからこそ、一番見たかったのがこれだ。
9月11日、渋谷クラブクアトロで『首 Vol.13』を見た。
ゲストはThe Birthday。これまでの共演者なら、オルタナやニューウェイヴの精神、良くも悪くも「王道からはみ出てナンボ」の価値観で語り合うことができたが、今回ばかりは役者が違う。ロックンロールの王道を走り続け、ロックンロールだけに人生を賭けているベテラン4人組に対して、(彼らから見れば)若手の THE NOVEMBERSはどう出るのかを知りたかった。