男装アイドル・風男塾がシーンで異彩 "2.5次元的存在”はアイドル界の常識を変える?

男装アイドル・風男塾が異彩を放つ理由

 2月24日に発売される風男塾のニュー・シングル『友達と呼べる君へ』には、「OH!ホワイトデイ」というカップリング曲が収録される。普通の女性アイドル・グループなら、女性が男性に愛を告白するバレンタインデイについて歌うだろう。でも、風男塾の場合、男装ユニットとして、男性側が女性の愛に答えるホワイトデイをテーマにするわけだ。

 アイドル・シーンの裾野が広がるにつれ、一夫多妻、仮面、へヴィメタルなど様々なコンセプトのグループが登場してきた。女性アイドル・グループの最大手であるAKB48も、バラエティで笑いをとりにいく一方、喧嘩上等なヤンキーの世界を演じる『マジすか学園』シリーズを続けてきた。アイドル・シーンが女の子の可愛さだけを追求するのではなく、多くの可能性を試す場になって久しい。そのなかで風男塾は、確固たる”男装“アイドルとして、台湾・香港・上海でワンマンライブ、イベント出演を重ねるなど海外にも進出し、昨年夏に発表したオフィシャルファンブックがAmazonのタレント本(総合)ランキングで1位になるなど、人気が上昇しているグループだ。

 もともとは、芸人のはなわがプロデューサーとなって2006年に結成された中野腐女子シスターズ(後に中野風女シスターズに改名)が男装した時のユニットだった(2011年に腐男塾から風男塾へ改名)。かつてはスザンヌも在籍していた。秋葉原に次ぐオタクの聖地、中野ブロードウェイを起点とする中野腐女子シスターズは、オタク系女子によるグループとされた。当初は男装ユニットと並走するという形だったが、2011年には中野風女シスターズのほうが休止し、風男塾に活動が一本化される。オタク系女子は退場し、オタク系女子が夢想した男性像=男装だけが残ったのである。路線転換を経て、ファン層は男性中心から女性中心に変化した。

 中野腐女子シスターズから10年、腐男塾の母体が始まってから9年目。メンバー交代やグループ名変更はあったものの、現在6名のうち青明寺浦正、赤園虎次郎、緑川狂平の3名は初期からの在籍者だし、長い活動歴での積み重ねがあるため、男性キャラクターとしてのパフォーマンスは練れている。彼ら(と呼ぶべきだろう)の立ち位置をよく示すのは、2013年のシングル曲「男装レボリューション」に登場する2.5次元という言葉だ。『テニスの王子様』に代表されるごとく、マンガ、アニメ、ゲームなど2次元の原作を3次元の舞台へとアレンジした2.5次元ミュージカルが注目されている。また、マンガの実写映画化も盛んだ。風男塾もその種の2.5次元的存在なのである。

 歌詞の大半は、はなわが書いている(曲の多くも彼だ)。彼の詞は熱いものが多く、「同じ時代に生まれた若者たち」(2010年)などという曲名から察せられる通り、友情・努力・勝利(『週刊少年ジャンプ』の有名な三大原則)という言葉であらわせるような少年マンガ的なテイストを持っている。草食を批判し肉食を賞賛する「草食ライオン」(2011年)なんて曲もあった。

「人を元気にする」を活動理念とする風男塾は、力強く、積極的なイメージを打ち出している。「漢」と書いて「おとこ」と読ませる類の感覚だ。近年、男性でありながら女性の姿や内面を持つ人を「男の娘(こ)」と呼ぶが、風男塾はそれを裏返して「女の漢(こ)」とでも呼びたいキャラクターなのである。

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