パスピエの魅力は、強く太い一本線になったーー間口を広げて成長するバンドの今を分析

パスピエの現在地を分析

「ノリやすい曲たちじゃないけど、“聴いて考える楽しみ”があると思ってる」(成田ハネダ)

 パスピエが、9月25日にメジャー3rdフルアルバム『娑婆ラバ』(9月9日発売)のリリースを記念して行ったライブ中、成田ハネダは同作についてこう語っていた。

 『娑婆ラバ』という作品は、これまでパスピエがライブを意識した作品や、その反動として作ったテクニカルな楽曲たちのリリースを経て、バンド自身と真正面から向き合ったアルバムに仕上がっていた。また、9月21日付の週間CDアルバムランキング(オリコン)で8位にランクインするなど、好調な売上を叩き出していることから、バンドの充実度もうかがえる。そして、この日はそれらの楽曲を初めてファンへ向けて披露する場であり、同時に過去作との共振を一つずつ確かめる時間でもあったといえるだろう。

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成田ハネダ。

 その“公開実験”は、「つくり囃子」「贅沢ないいわけ」「トロイメライ」「アンサー」という流れでスタートした序盤の展開に顕著だった。「つくり囃子」は、成田が「『四つ打ちの中で新たな解釈を生み出していかないと』という危機感が生まれた」とインタビューで語っているように、パスピエにとって様々な難題と向き合った『娑婆ラバ』の核となる一曲。そこからストレートなポップスである「贅沢ないいわけ」に繋ぎ、2ndミニアルバム『ONOMIMONO』のリード曲「トロイメライ」へと続く。同曲もまた、複雑だが同時にポップスでもあるという展開でもって、パブリックイメージとしての“パスピエらしさ”を明確に提示した一曲だ。そこから『娑婆ラバ』でもとりわけ開放的な「アンサー」でこのパートを締めたのだが、観客はこの間、良い塩梅で思い思いの動きーーいわゆる「聴いて考えた」結果を実行していたように見て取れた。

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三澤勝洸。

 続くMCでは、大胡田なつきが「ここが気持ちいいな、という部分を一緒に見つけられたらと思います。生で『娑婆ラバ』を楽しんでください」と語った。同作には、およそライブで再現不可能な演奏や音の重ね方が多いため、聴き手もどのようにこれらの楽曲が披露されるのか楽しみにしていた部分も大きいだろう。5曲目の「蜘蛛の糸」は、ボーカルエフェクトの強い、不穏な雰囲気を醸し出す原曲とは異なり、大胡田がエフェクト無しで歌い、三澤のギターと露崎のベースが前に出るロックな楽曲に変わっていたことに、彼女の言う“生らしさ”を感じたことも記しておく。

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