パスピエが語るポップミュージックの最適解 「キャッチーと奇をてらう、どちらかに寄りすぎてもダメ」

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 パスピエが4月29日にシングル『トキノワ』をリリースする。同作は年末に初の武道館公演が決定したパスピエが、2015年に起こす快進撃への号砲というべき作品であり、表題曲は高橋留美子原作のアニメ『境界のRINNE』のエンディングテーマに起用。楽曲もバンドキャリアにおいて最もポップと言えるものに仕上がり、アニメーションとの良いシナジーを生んでいる。今回リアルサウンドでは、バンドの中心人物であり、作曲を手掛けているキーボードの成田ハネダと、パスピエの特徴の一つであるアートワークや歌詞を手がけるボーカルの大胡田なつきにインタビューを実施。前作からの変化や、2人が考えるポップの定義、自主企画イベントと武道館公演への意気込みや海外展開について、大いに語ってもらった。

「パスピエのチャイナ風衣装は完全に『らんま1/2』の影響」(大胡田)

――まずは大胡田さんが手掛けた『トキノワ』のアートワークについて質問です。前回のインタビュー(参考:パスピエが語る、新作の壮大なるコンセプト「民族性にフィーチャーした作品を作りたかった」)では、『幕の内ISM』のジャケットで初めて目を描いて、今後はどうなるかという話をしたのですが、今作ではまた目がなくなりました。

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『トキノワ』ジャケット展開写真。

大胡田なつき(以下、大胡田):目を描かなかったというよりは、表題曲のテーマでもある“輪”を効果的に使いたかったんです。それでちょうど、今まで入れていたモザイクのような目線の部分や、身体でもボーダー柄っぽく輪が表現できるなと思って。あとは「輪っか=まわる」にちなんで万華鏡っぽい配色やデザインにしてみました。

――これまでパスピエのジャケットは、白からパステルカラーへと配色が変わってきていますが、このタイミングであえて黒にした理由は?

大胡田:万華鏡の「覗き見る」感じが効果的に出る色が黒だったんです。ただ、初めての試みだったので勇気を出しました。少しだけ和のテイストを入れつつという感じだったのですが、思っていたよりスタイリッシュな方向になって(笑)。

――もっと違うものを想像されていたんですか。

大胡田:曲的にも、もうちょっと和っぽいほうが良いかなと思っていたんですけど。でも、万華鏡も入れられましたし、出来上がったものを見ると、しっかり纏まったものになったなと。

――個人的には、曲がポップだったので、アートワークで締めたんだと思っていました。

大胡田:それはちょっと考えていなかったですね。でも、いろいろな捉え方をしていただきたいです。

――表題曲「トキノワ」は、アニメ『境界のRINNE』の主題歌としてすでにオンエアされていますが、漫画好きの大胡田さんが「高橋留美子作品にタイアップが決まった」という報を聞いてどう反応したのか気になります。

大胡田:これ以上ない幸せでしたね。私個人としては、高橋留美子さんのアニメに影響されて育ってきたので…。『うる星やつら』とか『らんま1/2』も好きですし、特にパスピエで着ているようなオリエンタル・チャイナ風の衣装は完全に『らんま1/2』の影響です(笑)。

成田ハネダ(以下、成田):『うる星やつら』に影響受けた衣装だったらすごいバンドになってたね(笑)。

――(笑)。確かに、パスピエと『らんま1/2』にみるアジアンテイストは近いものがありますね。歌詞はどういったイメージで『境界のRINNE』に宛てましたか?

大胡田:原作を読ませていただいていて、作中にも出てくるし、タイトルにもなっている「RINNE」という言葉に焦点をあてて、「輪廻の輪」を表現しようとしました。<巡り会い巡れば巡る>という歌詞だったり。MVもパスピエとしては新しい、回ってる感じの表現で(笑)。

成田:MVに関してはメンバーが口を揃えて、「メジャーっぽい!」って言ってました。一応、メジャー3年目なんですけどね(笑)。

――楽曲のほうも、いわゆる「メジャーっぽい」という部分と繋がるかもしれませんが、『幕の内ISM』の「七色の少年」や、配信リリースの「贅沢ないいわけ」に近いポップソングになっています。

成田:過去の作品だと「最終電車」や「名前のない鳥」もその系譜上にあると思うんですけど、これらの曲はリードとして収録したり、シングルの表題曲にした訳ではないので…。さっき挙げてもらった3曲はポップスという括りの中で直球勝負できるものだと思うんです。だからこそ、今回はみなさんの後押しもいただきつつ、投げ込めればと思って。

――その豪速球を投げるのに絶好のタイミングだったんですね。

成田:そうですね。今まではパスピエのディスコグラフィーの中で「こういう曲はどうだ!」という風に勝負してきたんですけど、それって決まったゴールのないなかでずっと模索し続けるようなものなので。今回は違った視点から僕らのことを見てくれる、知ってくれる方がいるので、まさにこのタイミングでストレートなポップスをやるのが一番じゃないかと判断しました。

――先の3曲はこれまでの楽曲と違い、三澤勝洸さんのギターが前面に出ている印象を受けました。これまでは成田さんの鍵盤と同じフレーズを弾いたりすることが多かったと思うのですが、この変化はどういう状況が作りだしたのでしょうか。

成田:やっぱり僕らのなかでも、年々モードは変わっていて。新しいお客さんも増えていくなかで、古くから知ってもらっているリスナーの方も増えているっていう意識もあるにはありますが、だからといってその人たちに合わせていこうとしているわけではないです。ただ、このタイミングでは、バンドが今回のような音作りに対して意識的だったのは確かです。

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