海外と日本におけるライブストリーミング配信の差とは? 各フェスの事例を比較してみた
しかし、一昨年の『FUJI ROCK FESTIVAL』や昨年日本初上陸した『ULTRA JAPAN』など、日本のフェスでライブストリーミング配信が行われる事例も一部で見られるようになってきた。
「2013年の『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演したナイン・インチ・ネイルズのステージは、全編生配信が行われました。彼らの復活後初ライヴだったので、どちらかというとアーティストの施策という側面が強く実験的な中継ではありましたが、大きな前進だと感じました。その模様は、海外でも多くの人が見ていて当時話題となりました。また、日本発のフェスではありませんが、『ULTRA JAPAN』では生配信を行いました。EDM系のフェスのほうが配信に関して積極的です。テーマパークのように豪華なステージ・セットや照明・花火の演出、派手な衣装に身を包んだオーディエンスなどの映像映えという意味でも、生配信との親和性は高いのかもしれないですね。導入できるフェスから生配信の文化が少しずつ日本にも根づいてほしいです」
インターネットでライブを配信することの最大のメリットは、国外の人も中継を見ることができるという点だろう。
「国内というよりは、国外の人々に対して現場の雰囲気を伝えることができるのがライブストリーミング配信のメリットだと思います。『FUJI ROCK FESTIVAL』、『SUMMER SONIC』あたりでそのような取り組みができれば、海外の来場者が増えてよいのではないでしょうか。今年のフジロックは、例年に比べてアジア系の来場者の姿を多く目にしました。円安の影響やオリンピック開催を控え、全体的に日本を訪れる海外の方が増えているタイミングでもありますし、フェス文化が根づいている欧米はもちろん、アジア圏の方々にも日本のフェスの魅力を伝えるいいきっかけになると思います」
アジアやヨーロッパなどの海外に進出する日本のアーティストが増えている中、インターネットを通して日本のフェスの模様や音楽シーンを伝えていく取り組みが少しずつ行われてもよいのかもしれない。様々な事情はあるにせよ、新規の音楽ファンを獲得していくためには、情報を広く公開していくということが今後より必要となっていくのではないだろうか。
(文=久蔵千恵)