海外と日本におけるライブストリーミング配信の差とは? 各フェスの事例を比較してみた
今年も海外フェスでさまざまなライブストリーミング配信の取り組みが行われている。今年の6月に開催されたイギリスの巨大音楽フェス『Glastonbury Festival』では、3日間6ステージ最大250時間に及ぶ生配信が行われたり、各国で開催されているEDM系フェス『ULTRA』では、当日の生配信はもちろん、高画質のライブ映像をアーカイブ化してフェス終了後も楽しめるような環境が整えられている。
これらのような配信は日本からでももちろん楽しむことができるが、海外フェスならではの楽しみ方だ。日本の主要フェスでライブストリーミング配信を導入しているものは現状とても少ない。同じフェスでも日本と海外でインターネット配信の取り組みについて差があるのはなぜなのか。海外フェスの動向に詳しい音楽ライターの上野功平氏に聞いた。
「欧米を中心とする海外ではフェス自体の歴史も長く、幅広い世代に根づいた文化となっています。発売初日にチケットが完売するほど人気が高いものが多いため、参加できないファンへの救済措置的な意味合いと、将来の顧客を呼び込むためのプロモーションツールとしての役割を果たしています。現に、日本でも海外フェスに参加したことがある人や、してみたいという人が増えているような感覚がありますね。さらに、ライブストリーミング配信はSNSと連動できる強みがあります。Twitterでハッシュタグをつけながら配信を見ている人同士で盛り上がるなど、SNSとの親和性も大きなポイントの一つなのかもしれません」
また、海外では配信するシステムを提供する企業の協力体制が整っている、という点も大きいという。
「通信会社の大手T-モバイルは『YouTube』と提携し、『Coachella Valley Music and Arts Festival』やシカゴの『Spring Awakening Music Festival (SAMF)』といった北米の音楽フェスを筆頭に、ライブのストリーミング配信を請け負っています。また、アメリカ最大手の『AT&T』は、2010年の『Glastonbury Festival』でまともに通信できなかったというクレームが殺到したことを反省し、ここ最近は数テラを超える超巨大アンテナを会場に持ち込んでいるようですね。そのような企業の協力体制が生配信をさらに盛り上げているのだと思います。一方、日本では各放送局が中継を担うことが現状一般的で、まだまだそのような通信会社との連携は難しいかもしれません」
日本でライブ映像を生配信するという試みに踏み込めない事情について、同氏は以下のようにも指摘する。
「どうしても日本の場合はライブ映像ひとつとっても、パブリシティや販売コンテンツの要素が強いのが現状です。日本はCDやDVDなどのパッケージも海外に比べてまだ全然売れているので、そのような流れは当たり前だとも思うのですが、ライブなどの体験にお金を払う人が確実に増えているので、そこは切り離して考えてもよいのでは、とも思いますね」