作詞家・松本隆が日本の音楽に残してきた功績 『風街レジェンド2015』の意義を読み解く

 作詞家・松本隆の作詞活動 45周年を記念したオフィシャルプロジェクト「風街レジェンド2015」公演が、8月21日と22日に東京・国際フォーラム ホールAで開催される。

 松本隆は20歳のとき、細野晴臣、大瀧詠一、鈴木茂とともに“はっぴいえんど”を結成し、ドラムと作詞を担当。「日本語のロック」の一つの雛形を提示し、その後の日本のポピュラー音楽に多大な影響を及ぼした。はっぴいえんど解散後は作詞に専念し、膨大な数のヒット曲を制作。寺尾聡「ルビーの指輪」や松田聖子「赤いスイートピー」などを手がけ、歌謡曲黄金時代を築いた。90年代以降は、若い世代とのコラボレーションも盛んに行い、00年代には自らのレーベルを設立、新人バンドを発掘するなどの音楽プロデュースも積極的に行ってきた。

 今回の公演に先立って、6月24日にはトリビュートアルバム『風街であひませう』がリリースされる。総合サウンドプロデューサーに鈴木正人(Little Creatures)を迎え、安藤裕子、小山田壮平(ex. andymori)&イエロートレイン、草野マサムネ(スピッツ)、クラムボン、斉藤和義、手嶌葵、中納良恵(EGO-WRAPPIN’)、ハナレグミ、やくしまるえつこ、YUKIといった、日本のポップミュージック界で活躍するボーカリストたちがトリビュートで参加している。

 松本隆はなぜここまで多くのミュージシャンやリスナーに、長きにわたって愛されているのだろうか。音楽ライターの森朋之氏は、彼の多大なる功績を振り返りつつ、核となる魅力についてこう語る。

「日本の歌謡曲に日常的な言葉遣いをセンス良く取り入れ、時代の空気、人々の欲望などを反映させたのが安井かずみさん、阿久悠さんだとすれば、そこにさらなる洗練を加え、より色彩豊かなポップソングへと導いた最大の功労者が松本隆さんではないでしょうか。根底には人間の繊細で複雑な感情、ときには痛みや葛藤なども含まれているのですが、そのドギツい部分は丁寧に濾過され、歌詞として現れる言葉はまるで優れた絵画や映画のようにカラフルで上品。それがもっとも端的に示されたのが、大瀧詠一さん、松田聖子さんの楽曲でしょう。私が初めて“作詞家・松本隆”を意識したのは10代前半で大瀧さんの『A LONG VACATION』を聴いたときですが、そのときもおそらく、松本さんの歌詞の洗練度の高さに惹かれたのだと思います」

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