作詞家・松本隆が日本の音楽に残してきた功績 『風街レジェンド2015』の意義を読み解く

 また、同氏は松本隆の手掛ける楽曲の幅広さについて、“質と量を兼ね備えた作家”だと続ける。

「大衆音楽に関わるクリエイターにとって多作であることは大切な条件だと思うのですが、松本さんはその点でも極めて優れています。松本さんはこれまでに2000作以上の歌詞を手がけていらっしゃいますが、そのアベレージが極めて高い。80年代以降の歌謡曲、J-POPの楽曲のクレジットを調べてみると、提供するアーティスト、ジャンルの幅が驚くほど広く“え、この曲も松本さんだったのか!?”と驚いてしまいます。ちなみにこの現象は筒美京平さんにも共通しているのですが、要は質と量を兼ね備えた作家ということですね」

 『風街レジェンド2015』ライブでは、元はっぴいえんどの松本、細野晴臣、鈴木茂のほか、稲垣潤一、イモ欽トリオ、EPO、斉藤由貴、佐野元春、C-C-B、寺尾聰、中川翔子、矢野顕子、吉田美奈子、水谷豊、安田成美らが出演し、井上鑑を音楽監督とする「風街ばんど」とともに松本が手がけた楽曲を披露する。森氏は同ライブが持つ意義について、こう述べる。

「『風街レジェンド2015』は、松本さんの膨大で濃密な歌詞活動がおそらく初めて可視化されるイベントと言えるでしょう。ふだんポップスを聴くときに作詞家のクレジットを気にしていない方もいらっしゃるかもしれませんが、すでに発表されている出演者、演奏曲を見るだけでも『え、この人も松本さんの歌詞を歌ってたのか?』という発見があるはず。それは同時に、日本のポップスのもっとも豊かなところを堪能できることにもつながるでしょう」

 2日間で、J-POPの30年を振り返ることができるといっても過言ではない同公演。豪華ゲスト陣と数々の名曲が、どのような化学反応を見せるのか、楽しみでならない。

(文=編集部)

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