『音楽と人』編集長が語る、同誌のあり方と主催イベントへの意欲「根っこにある人間性を出したい」

「どっちかが死ぬまでちゃんと取材をしていたい」

一一「音楽は聴けばわかる」って、音楽評論家やジャーナリズムから怒られそうな意見ですね。そこを真剣に語らなくてどうするんだ、と。

金光:ええ(笑)。でも僕は『音人』が音楽ジャーナリズムだとは思ってないし、もしやるなら本気で、今とは違う形でジャーナリズムをやりますよ。あと批評って意味では、すごく理路整然と書かれた原稿が、エンターテイメントという意味で面白いのかという話もあって。たとえばポリシックスを初めて知るときに、ディーヴォの話を深く掘り下げることはできる。でも、たとえば今月号でやったように、ひたすら好きな食べ物の話だけをしてるほうが面白い。そこに彼の真実とか、今回なんでこんな作品なのかっていう答えはあるわけだから。だから、やり方の違いですよね。

一一なるほど。ジャーナリズムではなく批評でもない音楽雑誌。

金光:うん。ただ、音楽をちゃんと愛して、そのアーティストの気持ちに立って、その人や作品をどう見せていくかは考えます。音楽雑誌に一番必要なのはそこだと思う。あとは読んで「あ、この人面白いんだな」って思えること。聴くという行為を除けば、リスナーのきっかけになるのは、やっぱりその人に対する興味だから。その興味を沸かせられるような原稿と写真を作る。そこはずっと変えていないつもりです。

一一17年も続けるのは、けっこうなモチベーションですよね。しかも過去には二回も休刊してるじゃないですか。

金光:うるさいな(笑)。まぁ、そうですね。会社も5回変えながら。でも、だからやってるところもありますね。お世辞かもしんないけど「休刊になるんだ」「会社を変えてまた復刊するんだ」って言ったときに背中押してくれたバンドがいて。少なくとも、このイベントに出てくれる人たちはみんなそう。ほんとに親身になってくれた。逆に言えばシンパになるのがウチしかないのかもしれないけど(笑)、それで俺は頑張ろうかなって思えたから。それはベンジーもそうだし、BUCK-TICKもそう。あとザ・バースディ……当時はミッシェルも同じで。その恩は絶対ありますね。で、みんな今もいいもの作ってる人たちだから。それが「年だ」とか「今の時代じゃない」っていうだけで切り捨てられていくのは俺は嫌だし、その良さはちゃんと伝えていきたくて。まぁ、そういうスタンスで続けると、どんどん雑誌がオジサンばかりになっていくんだけど(笑)。

一一出てるバンドがほとんど40代っていう。

金光:うん。でも僕はそういう人たちとまだまだ付き合っていきたい。それこそどっちかが死ぬまでちゃんと取材をしていたいし。今回出てくれる中で最年長は加藤さん、54歳ですけども、変な話、彼が車椅子でステージに上がって歌うまでちゃんと追っていければいいかなと思ってるので。お互い、それくらいの関係でやってるつもりだから、そういうバンドをいっぱい出して面白いことができればなと。そんな感じで、このイベントをやっていきます。

一一期待しています。ただ、現時点では集客が厳しいらしいと聞いています。

金光:はははは。予想していたより厳しいですね。フジロックとかライジングもそうだけど、何ごとも1年目っていうのはそう簡単にはいかないものなのかな、と。

一一売れないバンドというわけでは全然ないんですけどね。たとえばブラフマンや怒髪天がワンマンなら一瞬でソールドアウトするはずで。

金光:でも、みんなが集まったからこそ出したいカラーってあるでしょ。1バンド5〜6曲で、いろんなバンドがショーケース的に出てくるよりは、みんながひとつのコンセプトを楽しんでいるほうがいい。アーティストみんなで作る学祭みたいな。たとえば加藤さんに言われたのは「過去の俺の衣装を全部展示しよう」っていうアイディア。「増子が過去に使った櫛を全部展示しよう」とか(笑)。あとはトークショー。僕がバックホーンの松田くんと毎月やってる「福島大逆襲」っていうくだらない対談が実際に見られるとかね。『音楽と人』のコラムや対談ページがそのまま形になっていくような。その仕込みを今やってるところですけど。

一一つまり、自分たちらしくやろうとすればするほど、音楽そのものから離れていくのが『音楽と人』なんですね。

金光:いいんですよ、音楽を離れても!(笑)。やってる人たちは、もう音を鳴らせばもうロックンロールとして成立してるわけで。だったらその先のヒューマニティというか、愛すべき人間味が見えてくるものにしたほうがいい。音楽だけがいっぱいあるんじゃなくて、もっと笑えたり面白かったり、やってる人間の匂いが滲み出てくるものがあればなぁって思っていて。

一一その発想が、今のフェスの流れと真逆だなと思います。今はお客さんが主役、観客をいかに快適にさせるか、なんですよ。よりトイレを増やしてホスピタリティを充実させることが、フェスが成功していく鍵であると。

金光:あぁー。別に今のフェスを否定したくはないし、雑誌メディアがフェスを始めたのも、すごい発明だな、ビジネスとして正しいなと思いますよ。ただ一点だけ、雑誌とイコールじゃねぇじゃん、って思うことはあるから。今回出てくれるバンドは、今まで10年以上ずっと取材してきた人たちで、そういう人たちと僕はこれからも雑誌をやっていきたいし、そういう人たちと年を取っていくつもりだから。もちろん若手もいますけど、同じような匂いを持ったバンドばかりだと思うし、彼らが後を継いでくれるはずで。将来的にこのイベントは続けていきたいんですよ。そんなに規模を大きくすることはないからフェスとして成立はしないでしょうけど、これくらいのサイズ感で、もっと楽しいお祭り感を出していけたらなぁと思います。

(取材・文=石井恵梨子)

■イベント情報
『音楽と人LIVE 2015 ローリング・サンダー・レビュー』
開催日:2015年4月18日(土)、4月19日(日)
開場/開演:12:00/13:00
会場:東京 新木場STUDIO COAST

出演
4月18日
【ARENA STAGE/TENT STAGE】
菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet) × 山田将司(THE BACK HORN) × 佐々木亮介(a flood of circle)、怒髪天、THE COLLECTORS、THE BACK HORN、 古市コータローソロバンド(【バンドメンバー:浅田信一(G)、鈴木淳(B)、クハラカズユキ(Dr)、奥野真哉(Key)】【ゲスト:増子直純(怒髪天)、ウエノコウジ、百々和宏(MO'SOME TONEBENDER)、中野ミホ(Drop's)】)
POLYSICS、武藤昭平 with ウエノコウジ、MO'SOME TONEBENDER、Drop's and more…

【LOUNGE STAGE】
生福島大逆襲【松田晋二(THE BACK HORN)☓金光裕史(音楽と人編集長)トークライヴ】、
坂詰克彦 a.k.a. Chan-Saka (怒髪天) ワンマンショー、
加藤ひさし(THE COLLECTORS)×増子直純(怒髪天)の生大放談、新山詩織(弾き語り)、and more…

4月19日
【ARENA STAGE/TENT STAGE】
the pillows、ROMEO's blood、BRAHMAN、a flood of circle、KNOCK OUT MONKEY、GOING UNDER GROUND、go!go!vanillas、LAMP IN TERREN and more… 

【LOUNGE STAGE】
忘れらんねえよフィルハーモニー交響楽団、石崎ひゅーい and more…

料金:前売¥7,500(税込) 当日¥8,000(税込)/全立見・ドリンク代別

チケット一般発売日:2015年3月28日(土)
チケットぴあ:0570-02-9999(P: P:251-631)
ローソンチケット:0570-084-003(L: 76595))
イープラス:http://eplus.jp
ROLLING THUNDER REVUE特設サイト:http://ongakutohito.jp/RTR

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