日本のロックシーンの生き証人ーーザ・コレクターズ最新作から見えた音楽性とは?

 今回、筆者が今最も注目すべきバンドとして取り上げるのは、結成28周年を迎えたTHE COLLECTORS。なぜ、今ここでベテランとも言えるバンドを持ち出すのか? 先月リリースされた20枚目のアルバム『鳴り止まないラブソング』を聴けば、その理由が解るだろう。

 ザ・フーやザ・キンクスといったブリティッシュロックに影響を受け、1986年に結成、87年のメジャーデビュー以来活動休止もなく、独自の“モッズ”スタイルで日本のメジャーシーンをひた走り続けるバンドである。加藤ひさしの伸びやかなハイトーンボーカル、古市コータローの激しくも哀愁感漂わせるギター、阿部耕作のタイトなリズム… これほどまでにストレートな日本語ロックをやってのけるバンドが他にいるだろうか。紛れもなくロックンロールであるが、ポップ感満載の加藤のソングライティング、そして一切クセのない真っすぐな歌は、親しみやすさと懐かしさを感じさせる“日本のうた” ともいえよう。『鳴り止まないラブソング』にはそのタイトル通り、青臭さとピュアな心を感じさせる楽曲が並ぶ。背伸びしていた10代よりも、歳を取ったときに思い返す青春のほうがリアルだ。〈身の程知らずでいいじゃない いくつになっても〉と歌う加藤ひさしは、きっと歳を重ねることに興味がないのだろう。50代の永遠のロック少年からのメッセージである。

Da!Da!!Da!!! / ザ・コレクターズ

 恒久的なラブソングと青春、そしてもう一つの特色に駄洒落的な言葉遊びがある。アルバムのオープニングを飾る、NHK Eテレアニメ「おじゃる丸」のエンディングテーマ「DA!DA!!DA!!!」はその真骨頂とも言えるだろう。メリハリの利いた軽快なリズムと子どもにも覚えやすいしりとり歌詞。一度聴いたら忘れられないキャッチーさを帯びている。そしてバンドサウンドの要と言えるのは徹底的に無駄を削ぎ落とした古市のギター。「ミノホドシラズ」での絶妙なタイム感、「スルー」「踊る運命選」の豪快に掻きむしるプレイは、ギターとアンプだけあれば余計な歪みも要らないと思わせる潔さ。「俺自体がリッケンバッカーの木材だからね!」と、武骨で手なずけることの難しいリッケンバッカーを巧みに操る古市はポール・ウェラー、ピート・タウンジェントと並べても申し分ないギタリストだろう。今は、ギブソンのES-335を手にすることが多いのだが。

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