大滝詠一のベスト盤が好セールス リスナーを引きつける“物語性”とは?

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大滝詠一『Best Always』(SMR)

参考:2014年12月1日~2014年12月7日のCDアルバム週間ランキング(2014年12月15日付)(ORICON STYLE)

 今週のチャートの話に入る前に、ちょっと中森明菜について。今年8月の当コラム(中森明菜のベスト盤が“想定外”の大ヒット中 本格的な復活へとつながるか?)で「きっと今回のベスト盤の大ヒットは、彼女の本格的な復活をいろんな意味で後押ししてくれたはず」と書きましたが、遂に動き出しましたね。来年1月にニューシングル/ニューカバーアルバムのリリースが決定。現時点ではまだ噂段階ですが、年末の紅白への録画出演も内定しているというニュースが報じられています。本人のコンディションが万全かどうかについては一抹の不安もあって、単純に喜ぶのは実際に新しい作品を聴いてからにしたいと思いますが、仮にそれが時期尚早だとしても、やはり止まっていた状況を動かすのは数字なのだということがよくわかる出来事でした。

 さて、今週のチャートで注目すべきは2位の大滝詠一『Best Always』。もともと80年代には膨大なセールスパワーを誇っていたミュージシャンですし、キャリアを網羅したベストアルバムのリリースはこれが初めてということもあって、驚くには値しないのかもしれません。ただ、初回生産限定盤4.320円という価格にも関わらず、EXILE ATSUSHI、SCANDAL、JUJU、タッキー&翼、スキマスイッチといった並み居る人気アーティストのニューアルバムがリリースされた週に、後塵を拝したのはEXILE ATSUSHIだけというのは、やはり目を見張る結果と言うべきでしょう。

 中森明菜や大滝詠一の好セールスに対して「やっぱり40代以上の層はまだCDを買うんだなー」と分析することはバカでもできます。また、前回のコラム(椎名林檎『日出処』はもっと多くのリスナーに届くべき 初週売上げを受けて考えたこと)で椎名林檎の5年半振りのオリジナルアルバムのCDの初週セールスの数字を嘆きましたが、あの数字は、彼女のリスナーの中心層である30代の購買行動が想像以上にiTunesなどに移行していることを証明していたとも言えます。しかし、中森明菜も大滝詠一もそれぞれのジャンルで突出した存在であることは言うまでもないですが、同じ世代のアイドルやミュージシャンで、ベスト盤や編集盤で同じような結果を出せる人はほとんどいないというのも事実。そこから導き出されるのは、結局のところ、リスナーにCDの購入行動に向かわせるのは「物語」なのだということではないでしょうか。

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