Appleが30億ドルでBeatsを買収した背景とは? 音楽業界との関係強化が狙いとの見方

 アップルは現地時間の5月28日にヘッドフォンやスピーカー、ソフトウェア技術を扱う「Beats Electronics」と音楽配信サービス「Beats Music」を買収することで合意したと発表した。買収総額は約30億ドルで、日本円でおよそ約3056億円。アップル史上、過去最高額の買収となる。また買収に伴い、Beatsの創業者であるドクター・ドレーとジミー・アイオヴィンはアップルに加わることが決定している。

 Beatは2008年に音楽プロデューサーやラッパーとして活躍するドクター・ドレーとインタースコープ・レコードの共同設立者であるジミー・アイヴォンが立ち上げた音楽企業。アメリカのティーン世代から50%近い支持率を得ているという「b」ロゴのカラフルなヘッドフォンに代表されるオーディオ機器で有名なブランドだ。またBeatsはオーディオ事業(Beats Electronics)の他に今年の1月から月額9.99ドルの定額制音楽ストリーミングサービス「Beats Music」を開始。リスナーの視聴環境や気分に合わせたリコメンドサービスで人気を博し、現在およそ11万人のユーザーを囲い込んでいると言われている。さらに特許を取得したBeats独自のオーディオ技術のブランド「Beats Audio」も事業として展開しており、その技術はヒューレット・パッカードやクライスラーの製品などにも採用されている。

 今回のアップルによるBeats買収には大きく二つの背景があったと推測されている。ひとつ目はストリーミングサービスによる音楽事業の収益化。アップルはデジタル音楽ビジネスをメインストリームにした立役者だが、ここ数年は Spotify や Rdio といった定額制ストリーミングサービスの躍進が著しく、デジタル音楽ビジネスでのプレゼンスを相対的に弱めていた。モルガンスタンレーのレポートによると2013年にiTunesストアが保有する8億アカウント分のユーザーがiTunesストアに費やす金額は平均3.29ドルで、前年比で24%ダウンと大きく減少している。ストリーミングサービスの「Beats Music」を傘下に置くことで、iTunesの減少したシェアを補完したい考えだ。Appleのエディ・キュー上級副社長はプレスリリースで次のような声明を発表している。「Beatsの参加によってAppleの音楽サービスのラインナップは大きく強化される。無料ストリーミングのiTunes Radioに加えて世界でもトップクラスの有料音楽ストリーミングのBeats Musicを提供することができるようになった。もちろん長年愛されてきたiTunes Storeで従来通りダウンロード購入サービスを続けていく」。

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