長内那由多の「2025年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 不作の年を生き残ったテレビシリーズ

長内那由多の2025年ベスト海外ドラマTOP10

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2024年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、海外ドラマの場合は、2025年に日本で放送・配信された作品(シーズン2なども含む)の中から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクト。第4回の選者は、“インデペンデント演劇人”の長内那由多。(編集部)

1. 『ザ・ピット / ピッツバーグ救急医療室』(U-NEXT)
2. 『キャシアン・アンドー』シーズン2(ディズニープラス)
3. 『MO/モー』シーズン2(Netflix)
4. 『ザ・スタジオ』(Apple TV)
5. 『アドレセンス』(Netflix)
6.『人生の最期にシたいコト』(ディズニープラス)
7.『君との永遠』(Netflix)
8. 『TASK / タスク』(U-NEXT)
9. 『チェア・カンパニー』(U-NEXT)
10. 『セヴェランス』シーズン2(AppleTV)

 日本で細々と“洋画”を見続ける者にとって、近年救いとなってきたのがテレビシリーズの存在だった。時に映画を凌駕するスペクタクル、人間心理を探求した豊かなストーリーテリング、新たな才能の登場、監督や俳優たちのキャリアの更新……ここには劇場で映画を観るだけでは得ることのできない多くの発見と興奮があった。年間にリリースされるテレビシリーズの量はとても1人では追いきれず、年末には10本の素晴らしい作品を選ぶことができた。

 それがいったいどうしたことか、ついに底を打ったような不作の1年である。2023年に起きた俳優組合、脚本家組合によるストライキの余波もあるだろう。多くの人気シリーズや期待作は生煮えで、リライトが不足していた。第1話で提示されたメッセージが繰り返されるばかりで、目の覚めるような地平へ連れて行ってくれる作品にはほとんど巡り会えなかった。

 2025年最大の地殻変動であるNetflixによるワーナー・ブラザース買収は、再びテレビシリーズの製作本数を増加させるかもしれない。2時間で終わる物語に8時間をかけ、私たちを1分1秒でもサイト上に長く滞留させるためだ。幸先のよさは見込めないが、ここでは目を凝らし、次の10本を選び出してみた。

10.『セヴェランス』シーズン2(AppleTV)

『セヴェランス』画像提供:Apple TV

 本来なら『プルリブス』のために用意された席。本稿執筆時点でシーズン1が完結していないため、同じくAppleTVの知名度向上に貢献した本作に票を投じておく。

ベン・スティラーのギャグセンスが光る 『セヴェランス』には身近なディテールが満載

会社、好きですか?  連日の満員電車、過度な要求を強いてくるクライアント、反りの合わない上司、打ち解けられない同僚……帰宅する…

9.『チェア・カンパニー』(U-NEXT)

 主人公は会社で起きた恥ずかしい出来事をきっかけに、どうしても“イスの会社”にクレームを入れたい。でも、どこを探しても問い合わせ先が見つからず、やがて周囲では不気味な出来事が起こり始める……サタデー・ナイト・ライブ出身のお笑い芸人ティム・ロビンソンはほとんど思いつきのようなギャグの連打で視聴者を唖然とさせる。シーズン2が待ち遠しくて仕方ない。

8.『TASK/タスク』(U-NEXT)

『TASK/タスク』© 2025 WarnerMedia Direct Asia Pacific, LLC. All rights reserved.

 『ロスト・バス』『エコー・バレー』と2025年は計3本をリリースした脚本家ブラッド・イングルスビー。大金強奪犯とFBI特捜班の対決というプロットよりも、複雑な人間描写にこそサスペンスを見出す彼の筆致に触発され、マーク・ラファロら出演者全員が素晴らしい演技を見せている。

7.『君との永遠』(Netflix)

 LAに暮らす高校生の恋愛なんて自分には関係がないかもしれない。それでも些細なことで傷つき合う彼らのナイーブさを見ていると、限られた“季節”の間、誰かを強く想う体験が人生においてどれほど尊いことかわかる。

6.『人生の最期にシたいコト』(ディズニープラス)

『人生の最期にシたいコト』©2025 Disney and its related entities

 余命宣告を言い渡されたヒロインが求めるのは真実の愛ではなく、人生最高のセックス体験。堪らなく可笑しく、感動的な本作は再びキャリアベストを更新するミシェル・ウィリアムズと、息を吸うような自然体で真正のマゾを演じるロブ・ディレイニーあってこそだ。

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