『対岸の家事』が描いた“体験”に対する見解 我が道を行く肝っ玉ぶりを見せた島袋寛子

そして、互いに形こそ違えど共通点のある中谷に詩穂がかけた「体験できなかったっていうのも一つの体験で、それだっていつかは武器になるかも」という言葉は、お互いの呪縛を解き、それぞれの傷をそっと撫でるような言葉だった。母親について「許せない」と漏らした中谷に「許さなくていいです」と即答した詩穂の言葉が重なる。

“When life gives you lemons, make lemonade”(「人生がレモンを与えれば、レモネードを作れ」)と中谷は呟く。彼にとって詩穂はまさにレモン(=人生における困難や欠陥)をレモネード(=チャンス、良い結果)に変えるヒントをくれる存在であり、そしてこれまで中谷自身が努力によって、実はレモンをレモネードに変えてきた軌跡を静かに認めてくれる存在でもあったのだろう。そしてそれをきっと見抜いている中谷の妻・樹里(島袋寛子)は一枚も二枚も上手で素敵だ。樹里役を演じた島袋寛子は、常識に囚われず我が道を行く肝っ玉ぶりが一瞬で伝わるオーラ満載だった。

さて、詩穂にレモンを与えた張本人である父親が彼女に近づいているようだ。「村上詩穂 あなたのような専業主婦はお荷物です」という謎の手紙を投函したのはきっと詩穂のことをじっとりと見ていたシングルマザー・白山はるか(織田梨沙)ではないかと思われるが、なにやら詩穂の平穏であったかな日常に影が忍び寄っている。
朱野帰子による小説『対岸の家事』を原作としたヒューマンドラマ。専業主婦の主人公・詩穂が、生き方も考え方も正反対な「対岸にいる人たち」とぶつかり合いながら、自分の人生を見つめ直していく模様を描く。
■放送情報
火曜ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:多部未華子、江口のりこ、ディーン・フジオカ、一ノ瀬ワタル、島袋寛子、田辺桃子、松本怜生、川西賢志郎、永井花奈、寿昌磨、吉玉帆花、五十嵐美桜、中井友望、萩原護、西野凪沙
原作:朱野帰子『対岸の家事』(講談社文庫)
脚本:青塚美穂、大塚祐希、開真理
プロデューサー:倉貫健二郎、阿部愛沙美
演出:竹村謙太郎、坂上卓哉、林雅貴
編成:吉藤芽衣
製作:TBSスパークル、TBS
©TBS
©朱野帰子/講談社
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/taigannokaji_tbs/
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