『アンサンブル』真戸原の実母が物語を掻き回す 恋の三角関係を動かすため用意された波乱

『アンサンブル』真戸原の実母が登場

 前回のラスト、そこまでまったく登場シーンのなかった宇井(田中圭)が突然たかなし法律事務所に現れ、瀬奈(川口春奈)に「咲良がいなくなるかもしれない」と泣きつく。ちょうどその日は事務所をあげて瀬奈と真戸原(松村北斗)の交際を祝うパーティが行われる日で、瀬奈を呼びに来た真戸原は偶然にも瀬奈が宇井に寄り添って慰めている姿を目撃してしまうのである。

 恋愛ドラマにおけるなんとも古典的なパターンの勘違いシチュエーションから始まった3月1日放送の『アンサンブル』(日本テレビ系)第7話。それが単なる勘違いだったであっさりと消費されることはなく、まんまと真戸原の不安を煽る種となるのがこのドラマの特徴といえよう。宇井が来た理由を端的に言えば、咲良(稲垣来泉)の実母である美沙希(市川由衣)が突然現れ、咲良の親権を要求してきたという話であり、瀬奈はその弁護を任されることとなる。

 第4話のラストで宇井が瀬奈に“8年前のこと”を話した際に説明があったが、咲良は宇井の亡くなった兄の娘。海外に移住していた宇井の兄は亡くなった時点で離婚しており、身寄りが亡くなった咲良を宇井が引き取り、実の娘のように大事に育ててきたのである。今回のエピソードで語られた部分を補足すると、宇井の兄と美沙希が離婚したのは9年前(宇井の兄が亡くなる1年前)。美沙希は咲良を置いて帰国し、別の男性と交際。宇井の兄が亡くなった時にも連絡が取れず、8年の歳月が流れたというわけだ。

 めずらしく、といってはなんだが、これまでのエピソードのなかで最も“リーガル的”な問題が立ちはだかったといってもいいだろう。単に離婚後の親権トラブルというわけでなく、育児不安を理由にして半ば育児放棄をするかたちで音信不通になった実母が、監護できる環境が整ったからという理由で8年ぶりに現れ、未成年後見人である宇井から咲良の親権を取り戻そうとする。劇中でも語られている通り、慣例的に親権トラブルは実母が圧倒的に有利といわれているが、このような複雑なケースではいかに。ケースバイケースで裁判所が判断することなので断定はできないが、少なくとも放置していた期間を考慮すれば美沙希が“圧倒的有利”という前提は少々疑問が残る。

 それ以上の引っ掛かりがあるとすれば、宇井のこの上ないほどの狼狽ぶりだ。たしかに咲良への愛情の深さはこれまでの宇井を見ていればよくわかる。しかし、よくよく考えてみれば、彼は元弁護士(弁護士職を辞して起業しているが、資格自体は保有しているしそれ相応の知識を有しているはずだ)。相手側の弁護士に未成年後見人の立場だからと丸め込まれ、大慌てで“恋愛トラブル弁護士”(そういえばこの設定、リーガル要素が薄くなって以降あまり触れられていない)である瀬奈に泣きつくよりは、もっとこうした案件に強い知り合いがいて然るべきところでは。

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