『アンサンブル』宇井は実は“いいヤツ”だった? 田中圭が成立させる情熱的な一面

『アンサンブル』田中圭がみせる情熱的な一面

 恋愛ドラマで必ずと言っていいほど存在する“当て馬”。最初からくっつくことが分かっている主役カップルの恋路を阻み、物語を盛り上げながらハッピーエンドまで2人を導くありがたい存在である。このところ、そんな当て馬としての需要が高まっているように見えるのが、俳優の田中圭だ。

 田中は現在、連続ドラマ『アンサンブル』(日本テレビ系)に出演中。本作は、現実主義の人気弁護士・瀬奈(川口春奈)と理想主義の新人弁護士・真戸原(松村北斗)がバディを組み、恋愛トラブル裁判を通して距離を縮めていくリーガルラブストーリーで、田中は瀬名の元カレである宇井を演じている。

 瀬名は好きな言葉が「コスパ・タイパ」で、恋愛は時間の無駄だと思っているキャラクター。近年、恋愛ドラマのヒロインはこのタイプが多い傾向にあるが、瀬名の場合は最初からそういう主義だったわけではない。かつて5年間交際していた宇井が突然、姿を消したことがトラウマとなり、恋愛に対して臆病になっているのだ。


 その宇井が引き払ったアパートで鳴り響いていた踏切の音が現在も苦手で、真戸原が瀬名の耳を両手で塞いであげるシーンが鉄板となっている。瀬名の親友たちも宇井のことを「クソ男」とこき下ろしており、どちらかといえば、悪役寄りの当て馬で、視聴者票は真戸原に集中するかと思っていた。ところが、蓋を開けてみると宇井派が多い。これはどういうことか。

 第一に、宇井は何の前触れもなく姿を消したわけではなく、当初は瀬奈と話し合おうとしていた。だが、宇井が自分に何の相談もなく弁護士を辞め、起業していたことにいじけて瀬名がずっと連絡を無視し続け、最終的に別れを切り出したという経緯がある。その設定がまず、視聴者が「あれ? 宇井、そんなに悪くなくない?」と思ってしまった要因だ。しかも、瀬名と偶然再会を果たしてからは何度も姿を消した理由について説明しようとするが、なんだかんだで毎回逃げられてしまうので、不憫なキャラクターとなってしまった。


 極め付けには、その波瀾万丈な境遇。瀬名の前から姿を消した8年前、宇井は事故で亡くなった兄の娘・咲良(稲垣来泉)を、高齢の両親に代わって引き取ることに。当時、弁護士を辞め、起業したばかりだった宇井は仕事と育児を両立させるのに精一杯だった。本当なら瀬名に頼ったり、弱音を吐きたいときだってあったはずだ。けれど、これから弁護士になろうとしている瀬名の将来を考えて別れを切り出した宇井。「なぜ弁護士を辞めて起業することを瀬名に相談しなかったのか」については説明されておらず、少し引っかかるが、そこに後ろめたい事情がないのであれば、宇井は今のところ、“クソ男”じゃなく“良い男”だ。切ないほどに大人で、瀬奈に対する愛情もある。

 あえて欠点を挙げるなら、出張の間、咲良を元カノである瀬奈の母・祥子(瀬戸朝香)に預けたり、ドイツの会社と契約を締結するにあたって、すでに通訳がいるのに、「ドイツ語が話せる弁護士が必要」と瀬奈を出張に連れ出したり(しかも、瀬奈は該当の場面で日本語で話していた)、未練があるからとはいえ、やり方が少々強引なところだろうか。ただそうでもしなければ、瀬奈が話を聞いてくれなかったとも言える。

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