『虎に翼』はるが寅子に注いだ包み込むような愛情 朝ドラで描かれてきた“母親の死”

『虎に翼』朝ドラで描かれてきた“母親の死”

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』第58話で、道男(和田庵)に手伝いをさせ、お風呂の炊きかたを教えようとしていたはる(石田ゆり子)の白髪が増えていることに気がついた。とても優しく強かったはるも年を重ねているのだなと思っていたら、庭先で倒れ瞬く間に弱々しい姿となってしまった。急な別れがとても寂しい。

 近年の朝ドラでも“母親の死”はたびたび描かれてきた。温かい愛情を惜しみなく注ぐ母の死は、特に幼い時ほど主人公に大きな影響を与える。『おちょやん』(2020年度後期)の主人公・千代(杉咲花)は5歳の時に実母のサエ(三戸なつめ)を亡くしている。千代のことをとてもかわいがり、時には「かぐや姫」にたとえるほどだった。千代もそんな母親のことが大好きで、亡くなってからは母の代わりに弟の面倒をみ、家事を一手に担って、小学校に行けないくらい忙しく奮闘した。そして母から形見としてもらった月の様に綺麗なビー玉を大事にしていた。千代が頑張る理由の一つに母の存在があったのだ。

三戸なつめ、『おちょやん』母親役で見せた新たな輝き 作品のスタートに大きな印象残す

11月30日からスタートした、杉咲花主演のNHK連続テレビ小説『おちょやん』に、主人公おちょやんの亡くなった母・サエとして登場し…

 後年、千代が新喜劇への1日限りの再出演を決め、劇中にふと客席に目を向けると、父・テルヲ(トータス松本)と弟・ヨシヲ(倉悠貴)の間にサエが座っており、拍手喝采を送っていた。いくつになっても千代の心の中には、大切な家族としてサエがいたのである。

 『らんまん』(2023年度前期)の万太郎(神木隆之介)は、7歳の時に母のヒサ(広末涼子)を亡くしている。ヒサは万太郎を産んでから床に伏すことが多くなり、子育てのほとんどは祖母のタキ(松坂慶子)に任せていたが、植物が好きな万太郎の成長を温かく見守っていた。万太郎は高知では有名な酒屋の跡取り息子だったが、ヒサは植物に心を奪われてばかりの万太郎の行動を決してとがめなかった。これが“好きを貫く”という万太郎の基礎ともいえる心を育てたともいえるだろう。

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