渡部俊樹×榎木淳弥×武内駿輔×橘龍丸、P4が『黒執事』と共にあった“青春”を振り返る
数多くの話題作が並ぶ春アニメの中でも、原作ファンから特に大きな注目を集めている作品の一つが、『黒執事 -寄宿学校編-』だ。
枢やなによる人気漫画を原作とする『黒執事』シリーズは、2008年にアニメ化されて以降、19世紀末期のイギリスを舞台とした独特の世界観と、名門貴族ファントムハイヴ家を取り巻く魅力的なキャラクターで多くのファンを魅了してきた。
現在放送中の『黒執事 -寄宿学校編-』は、事件の調査のため、ファントムハイヴ家の若き当主シエルとその執事セバスチャンが生徒に扮して名門校・ウェストン校に潜入するエピソードだ。ミステリアスな謎を解き明かしていくストーリー展開に加え、シエルとともに寄宿学校生活を送ることになる4人の監督生(プリーフェクト)・通称“P4(プリーフェクト・フォー)”が、物語に大きな魅力を与えている。
アニメ『黒執事 -寄宿学校編-』は、P4のキャストを人気・実力ともに兼ね備えた豪華声優陣が演じていることでも話題を呼んでいる。エドガー・レドモンド役の渡部俊樹、ロレンス・ブルーアー役の榎木淳弥、ハーマン・グリーンヒル役の武内駿輔、グレゴリー・バイオレット役の橘龍丸に、『黒執事』との出会いをはじめ、それぞれの「青春」について振り返ってもらった。
男性目線で観ても面白い『黒執事』の魅力
ーー皆さんと『黒執事』の出会いから伺っていきたいと思います。
武内駿輔(以下、武内):アニメの第2シーズンがちょうど中学生ぐらいの時にやっていて、それをきっかけにDVDで第1シーズンを見返したりしました。僕ら世代は、まさにあの当時1番盛り上がりの中にいた世代なのかなと思います。みんなキャラの絵を描いたりしていましたね。
ーーそんな武内さんは、過去にカラオケでグレルのキャラソンを歌っていたそうですね。
武内:「深紅」はよく歌っていました。ゴシック調のモノトーンな雰囲気の中で、グレルの赤い髪の色が印象的で。良い意味でクラシカルな雰囲気にとらわれない台詞回しや、福山(潤)さんのお芝居も素晴らしいですよね。あとは単純に僕が眼鏡キャラ好きっていうのもあります(笑)。
ーー渡部さん、榎木さんはいかがですか?
渡部俊樹(以下、渡部):養成所1年目の時に、いろんなアニメをひたすら観ていた時期があり、その時に出会いました。僕、英国のファッションが好きなんです。普段シエルたちが着てる服とか舞踏会のドレスなどの年代を投影したファッション、建物のディテールが自分の中でめちゃくちゃ刺さるんですよ。そこから漫画を買い始めて、「こんなにお洒落な作品があるんだな」とずっと惹きつけられて今日まで読んできました。
榎木淳弥(以下、榎木):確かに……。僕は、多分本屋で表紙を見たのが最初かなと思って。セバスチャンがものすごい高さから紅茶を注いでる表紙のビジュアル(※『黒執事』単行本1巻)が印象に残ってます(笑)。学校でも流行り出してたんで、セバスチャンの決め台詞の「あくまで執事ですから」はよく友達と応用して遊んでたりとか。カッコよさの中に優雅さがあるような、色気のある作品だと思います。
ーー橘さんはいかがですか?
橘龍丸(以下、橘):僕は基本的に、アニメを観るきっかけは大体姉の影響が大きいんです。『黒執事』も姉がよく観ていて、一緒に隣で観ていました。最初は女性向けのものだと勝手に思ってましたけど、ちゃんと観るようになってから、「『黒執事』って男目線で観てもすごく面白いな」と思いました。
ーー16年放送していることもあって、視聴者の年齢層も幅広いですよね。
橘:そうなんですよね。それこそ東京に来てから、ご縁があって知り合いの役者さんに、『黒執事』のミュージカルを1度観に行かせてもらったことがあり、そのクオリティの高さに衝撃を受けました。役者さんはもちろん、スタッフさんも本当に力を入れているのが伝わってきて。アニメ版も、そういった作り手の皆さんの熱を感じる作品だなと感じています。
ーー皆さんが演じるP4は、それぞれの寮のイメージも重なっているキャラクターですよね。演技面でのアプローチや意識したことはありますか?
橘:バイオレットに関しては、感情をあんまり出しすぎないことで表現できる方法を探る必要がありました。オーディションテープの時よりもだいぶ音も感情も下げてやらせてもらいました。でも、完璧に淡々としているわけではないんですよね。
ーー物静かなイメージはありますが、P4のメンバーといるときは楽しそうです。
橘:そうなんです。決して完全なる人嫌いというわけでもなくて、監督生の4人でいる時は本当に家族みたいな感じで、みんながわちゃわちゃしてるところで、バイオレットは部屋の隅っこで1人で宿題をしてるイメージがあります。その辺のさじ加減が、最初の頃はむずかしかったですね。
榎木:「ブルーアーはなんでこんなに校則にこだわるんだろう?」っていうところを、まず何とか自分の中でしっくりさせなければなと思いまして。「学校が好きなんだろう」というのはわかると思うんですが、そうなると今度は「何で学校が好きなんだろう?」みたいな(笑)。
ーー答えは出ましたか?
榎木:自分なりに考えてみて、国に対する愛が強いのかもしれないと思いました。ウェストン校は、この国の未来のエリートを輩出する学校なので。愛国心が人一番強いから、「ここで自分たちが腐ってたら、どんどん国が駄目になってしまう」と考えて、校則を大切にしている。そういうふうに考えながら、ブルーアーの役作りをしていきました。
ーーややナルシスト感のあるレドモンドはなかなか癖も感じますが、渡部さんはどうでしょう?
渡部:あまりこの手の役をやったことがなかったので、最初は「もっとやっちゃっていいですよ」とは言われていました。彼は4人の中で唯一血筋が明かされてるキャラクターでもあるので、あの叔父さん(ドルイット子爵)の血が通ってるとなれば「思い切ってやっちゃっていいんだろうな」と開き直れた部分はありました。とはいえ優雅さをできるだけ押し出していきたかったので、宝塚にも通じるような雰囲気の気品は意識したところです。
ーー武内さんは肉体派のグリーンヒルです。
武内:そうですね。割とこの作品は写実的な表現をしても大丈夫そうな雰囲気があったので、音圧はそんなに高めじゃなくてもいいのかなと。ただやっぱりグリーンヒルは体格や声が大きいだけじゃなくて、肉体から感じる目に見えないオーラや覇気みたいなところを表現できたらという気持ちがあって。背中から声が出てるような雰囲気を大切にしました。
ーー特に原作を読んでいるファンの方だと、P4の「伝統は絶対!」をアニメで聞けたことが嬉しかった方も多いはずです。
渡部:実はあれ、アフレコで1回も揃ったことなかったんですよ!
一同:(爆笑)
橘:最後に、榎木さんが「もう画をみないで、こっちのみんなで(顔を見て)合わせよう」って言って……。
榎木:それでも合わなかった(笑)。
武内:ディレクターも笑ってたもんね。朝までかかるのかと思うくらい(笑)。なんとか時間内に終わって良かったなと思います。でもそれだけ、個性のある4人が集まったってことです!
榎木:あと、ブルーアーが紅茶を飲みながら話すシーンがあって。僕も現場にあったコーヒーを飲みながらアフレコしたら……。坂本真綾さんに「あれ? 味噌汁飲みながら芝居してません?」って。
渡部:めっちゃ味噌汁臭かった(笑)。
榎木:ね……向こうで武内くんが飲んでいて(笑)。
武内:音響監督も「ここの味噌汁うまいんだよ」と仰っていて。
渡部・榎木・橘:あははっ!