上川周作が『虎に翼』で生む“イイ味” 『まんぷく』を経て体現する直道の“在り方”

上川周作が『虎に翼』で生み出す“イイ味”

 「俺には分かる」が口癖の感覚派である直道のようなキャラクターは、いくらでも自由に遊べる(=思うように演じられる)存在だとも思える。だが、このポジションでの遊びが過ぎると、作品全体の印象がルーズなものにもなりかねない。2018年度後期に放送された朝ドラ『まんぷく』では、泣き虫な画家の卵の役として上川は遊んでいた印象があるから、かなり自覚的に自身の役どころをまっとうしているのだろう。『まんぷく』で演じた名木純也は非常に個性的なキャラクターで、あちらではまた別の意味での“イイ味”を出していた。もちろん、この2作の間には大きな時間の開きがあるため、上川自身が俳優としてさらに力をつけたのであろうことは言うまでもない。2021年には初めて主演を果たした時代劇『CHAIN/チェイン』も公開されているのだから。

 “イイ味”でいえば、大ヒット作となった『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(2023年)での上川もそうだ。同作で彼が演じているのは、現代から1945年の日本にタイムスリップしたヒロイン・加納百合(福原遥)が出会う特攻隊員のひとり。穏やかな好人物だ。妻と生まれたばかりの子どもがいるという彼の事情を知ったとき、観客の誰もが胸を締め付けられたことだろう。それでも彼は仲間たちや百合に優しく語りかけ、微笑みかける。いくらフィクション作品とはいえ、歴史上の悲劇を物語のモチーフとして扱っている以上、“イイ味”などという軽い言葉を使うべきではない。それは百も承知の上だ。けれども、主演の福原遥や水上恒司、出口夏希、伊藤健太郎といった若手がチームの中心となる作品において上川の言動が生み出すそれは、やはり“イイ味”というよりほかにないものだったのである。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』©️2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会

 『虎に翼』での直道は、愛する花江(森田望智)と家庭を築き、順風満帆だ。しかし、時代が時代である。物語のにぎやかなムードを戦争の気配が侵蝕している。彼に直接的な影響を及ぼすドラマが生じたとき、上川はどのような反応をもって本作における直道の在り方を示すのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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