上川周作が『虎に翼』で生む“イイ味” 『まんぷく』を経て体現する直道の“在り方”
伊藤沙莉が率いる朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)を、ここまで支えてきた頼もしい面々。物語が進めば新たな仲間との出会いが必ずやあるものだが、やはりそこには別れもある。ヒロイン・猪爪寅子(伊藤)の“人生”を描くものなのだから当然だろう。
そんな彼女の人生において、ずっとそばにいた者のひとりが兄の直道だ。演じているのは上川周作。登場するたびに“イイ味”を出す頼もしい存在である。
この直道とは、妹思いの心優しい人物だ。どこか真間の抜けたところがあるが、そこがまたいい。彼のような者を“根っからの善人”というのかもしれない。いつも笑顔がまぶしく、見ているこちらまで笑顔になってくる。
……と、直道に対する印象を端的に記してみたが、これに異を唱える方は少ないだろう。番組公式サイトの人物紹介欄の文面から私たちが抱く直道のイメージを、演じる上川は丁寧に具現化させてきたのだ。そのキャラクターを主張できる機会はかぎられているが、それよりも上川は、直道が猪爪家の中でどのように振る舞うべきかを大切にしてきたのではないだろうか。思い返してみれば劇中の彼は、どこか一歩引いている印象がある。
本作の公式ガイド『連続テレビ小説 虎に翼 Part1』(NHK出版)にて上川は直道について「理論派の妹・寅子とは違い、兄の直道は思ったことをスッと言う感覚派」と述べている。直道はドラマを発生させるポジションではなく、生まれたドラマへの反応によって作品をより盛り上げるポジションなのである。