『呪術廻戦』虎杖悠仁のピンチに駆けつける東堂葵 アニメ映えする“ブギウギ”の真価とは

『呪術廻戦』“ブギウギ”しまくる東堂葵

 少年漫画の主人公が仲間を失い、傷だらけになって心が挫けそうな時に颯爽と駆けつけてくれるキャラクターは、この世の中に一定数存在する。しかし、『呪術廻戦』の東堂葵はその中でも別格の存在感を放つ。例えば、『僕のヒーローアカデミア』のオールマイトのような、登場するだけで敵が一発KOできそうなキャラというわけでもない。むしろ、東堂の呪力による打撃は虎杖悠仁や釘崎野薔薇とは違って魂に干渉しないため、真人のHPを削ることはできない。それでも、彼は圧倒的なゲームチェンジャーなのだ。

「どんな女が好みだ?」

 第1期での初登場時、この質問と大きな図体でかなりのインパクトを与えた東堂。仲間であるはずの高専生徒(伏黒恵)に対して殺すことも厭わないほどの攻撃を加えるなど、血の気が強い印象があった(とはいえ、今考えてみれば伏黒も東堂に対して「魔虚羅」を出そうとしていたのだからお互い気が触れている)。回想シーンを振り返っても、小学3年生の時点で高校生をボコボコにしていたので子供の頃からあまり変わっていない。呪術師はある程度狂っている人の方が向いていて、メインキャラクター(虎杖・伏黒・釘崎)がみんな学生時代に誰かをボコボコにした過去を持つように、東堂もその例に漏れない。

 “相手が俺をナメていて、俺が相手にナメられていると感じたらその瞬間にゴングが鳴る”、そんなルールを持ちながら歳上を睨んでいた幼い彼の前に現れたのは、他でもない特級呪術師の九十九由基だった。当時の東堂の年齢(9歳)から考えて、彼女が夏油傑と“あの会話”をした約1年後に東堂と出会ったことが推測される。彼が高専に入学したのは九十九によるスカウトであり、先の質問も師となった彼女からの受け売りだ。ちなみに、東堂の好きなタイプ「ケツとタッパのデカい女」は九十九のことを指していて、彼の顔にある大きな傷も彼女のスパルタ特訓によるものである。子供の頃から“退屈”を毛嫌いしていた東堂は、九十九との出会いから“退屈”が裏返ることを感じた。

 そんな彼は非術師の家系でありながら在学中に1級術師になるほどのハイセンスの持ち主である。術式の「不義遊戯(ブギウギ)」は手を叩くことで、術式範囲内にある一定以上の呪力を持つ物体の位置を入れ替える。真人が一瞬で東堂の術式を“手を叩くことで位置替え”すると見破ったように、パッと見てわかりやすい技ではあるが、その条件まで見破ることができるかが肝心なのだ。例えば位置替えの対象。東堂が隠し持っていた石を虎杖に投げさせ、その石と自分の位置替えをしたように、彼の術式対象は生物のみならず(呪具や呪骸を含む)呪力を込めた無機物にも適用される。

 しかし、真人が話していたように“わかっていても混乱する”のが「ブギウギ」の真価。手を叩いても位置替えをしないブラフも通用するため、2組で敵と戦う場面ではその術式の強みが発揮される。東堂は元々1人で十分に強い。その実力は、かの「百鬼夜行」で特級呪霊を1体、一級を5体単身で倒したことで証明されている。それでも真人という特殊な敵を前にした今は、虎杖のための“場を作る”役に回っているのだから興味深い。物語における強い駒の動かし方がいくつも用意されているのも『呪術廻戦』の面白さだ。そして東堂の「ブギウギ」は特にアニメ映えする術式であるため、視覚的に観ていて楽しいのも「渋谷事変」のクライマックス戦に相応しい。

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