すなくじらの「絶対食べたいグルメ」
『薬屋のひとりごと』毒味スープを作ってみた 薬効と旨味が溶け込んだ薬湯のような一品

あの映画やドラマに出てくる美味しそうな料理は、どうやったら食べられるのか。スクリーンの向こうから食欲を誘う、濃厚で魅力的なパスタや、物語の中から香り立つように登場する心温まるクリーミーなスープ。ああ、どうしても食べてみたい。でもその料理たちは、画面の中の世界でしか味わえない……。
しかし、ふと思った。もし食べられないのなら、自分で作るのはどうだろう?
そんな“エンタメグルメ”に憧れるライターのすなくじらが実際に料理を作ってみる連載「絶対食べたいグルメ」。第4回は、TVアニメ『薬屋のひとりごと』より猫猫が園遊会で口にした“毒味スープ”でお送りする。
なんとあの園遊会で猫猫が口にしたスープが飲めるというではないか。しかも原作者・日向夏先生が完全監修と聞く。これは見逃せない! フィクションの世界から現実へと飛び出したレシピ、それも作者自らが監修するとなれば、その味わいは本物に違いない。
さて、最初に断っておくとなるべく公式の出すレシピに忠実に作っているものの、今回はかなり材料集めに苦戦し、やむなく一部代用している。例えば干し貝柱が見つからず、その粉末で代替したのだが、時間に余裕のある方はネットスーパーなどでじっくり探せば、きっとレシピ通りの材料が揃うはず。とはいえ今回は「一般家庭で再現できるか」という視点で、どうかあたたかい目で見守っていただけると幸いだ。

とはいえ、概ね貝柱以外の食材は無事に集結。白きくらげについては「黒いのでも代用できるのでは?」と一瞬心が揺らいだものの、調べてみると〈黒きくらげと白きくらげはそもそも別物の品種で、舌触りや食感・味わい、さらには薬効にも違いがある〉という事実を知り、意地でもなんとか品を入手。こうして皿に並べた材料たちは、まるで猫猫の世界から抜け出してきたかのような、薬屋ワールド感が漂っている。

■材料(4人分 ※レシピ参考)
干し貝柱:2個
中華用干しエビ:10g
干し椎茸:1枚
乾燥白きくらげ:5g(お好みで)
A 鶏手羽先:6本
A 手羽元:8本 (手羽先がない場合、手羽元14本でも可)
A 長ねぎ 青い葉の部分+白い部分10cmほど
A しょうがスライス:3枚
A にんにく:ひとかけ
A 塩:小さじ1/4
A 水:1リットルB 花胡椒(ホール):小さじ1/2
B コリアンダー(ホール):小さじ1/2
B くこの実:10粒
B しょうゆ:小さじ2
B 砂糖:小さじ1/2■前準備
前日の晩に干し貝柱・干し椎茸を冷蔵室内でひと晩(最低でも10時間ほど)水に浸して、じっくりと戻しておく。
しょうがは丁寧に厚さ5mmの薄切りに整え、にんにくは包丁の腹でつぶす。長ネギは根と青い部分を切り落とし、白い部分を約10cmほど取り分けてみじん切りに。ここからが肝心で、切り落とした長ネギの青い部分と残りのA材料を全て鍋に投入し、強火にかけていく手順だ。

ここで恥ずかしい告白をせねばならないが、筆者はうっかりとみじん切りにした白い部分のネギまでこの段階で鍋に放り込んでしまうという初歩的ミスを犯した。皆さんはどうか同じ過ちを繰り返さぬよう、レシピの手順をしっかり確認してほしい。

鍋がぐつぐつと沸騰し始め、表面にアクが浮かび上がってきたら、丁寧に小まめにすくい取って捨てていく。アクを綺麗に除去できたら、火加減を中火よりの弱火に調整し、ふたはせずにそのまま30分ほど煮出していく。火加減の絶妙な目安は、湯面にぽこぽこと小さな泡が立ち、鍋の中の鶏肉がゆるやかに揺れ動くくらい、とのこと。

スープを煮出している間に、次の工程へと移る。乾燥白きくらげと干しエビを別々の器に入れ、たっぷりの水に浸して戻していく。どちらも室温で30分ほど置くのだが、ここで乾燥白きくらげと事前に準備していた乾燥しいたけを並べてみると、それぞれそのサイズ差に驚かされる。特に白きくらげは乾燥時の見た目に騙されて、入れすぎないよう要注意。一方、干しエビは意外にも乾燥前後でそれほどサイズに変化がなかった。
次に、目の細かなザルかこし器を使いながら、煮出したスープをもうひとまわり小さな鍋へと移し替える手順が指示されている。しかし、筆者の家では小さい鍋のストックがこれ一つしかないため、説明通りに一度こして、また同じ鍋に戻す。具材の中から手羽元2〜3本を選りすぐり、のちほどスープの具材として使用するとのこと。

冷蔵室でじっくりひと晩かけて戻した干し椎茸は、まず水気をきちんと絞り、石づきを切り捨て、カサを薄切りにする。そしてさっと下茹でするのだが、レシピには※印で「下茹でのかわりに、電子レンジ加熱でも可。その場合は100ml(分量外)の水と一緒に耐熱容器に入れ600wで1分加熱」という親切な代替法が記載されている。こうした配慮がなんとも嬉しい。






















