『何曜日に生まれたの』は私たちに希望を与えてくれた 野島伸司が届けた“1割の素敵なこと”

『何曜日に生まれたの』が与えてくれた希望

「ストレスの9割は対人関係。でも、1割は素敵なことがあるかも」「雨に濡れなきゃ、虹は見られない」

 3年前に突如、私たちの生活を脅かした新型コロナウイルス感染症。その対策として非対面・非接触での生活様式が求められるようになったが、孤独を感じる人が増える一方、「面倒な人間関係から解放されて楽になった」という声も散見された。人と会わず、家に引きこもっていれば、雨に濡れることも、無駄に傷つくこともない。けれど……。

 コロナに青春を奪われた若者がずっと気にかかっていたという脚本家・野島伸司。そんな彼の最新作『何曜日に生まれたの』(ABCテレビ・テレビ朝日系)は、勇気を持って外へ踏み出した先の1割の素敵なこと、誰かと見る虹の美しさを届けてくれた。

 『死にたがる彼女を1000回救う』のヒロイン・アガサに憑依した熱狂的なファン(山之内すず)にナイフで襲われかけた公文(溝端淳平)。しかしながら、実際に刺されたのは咄嗟に公文をかばった丈治(陣内孝則)だった。幸いにも命に別状はなく、公文はほっと胸を撫で下ろす。

 そんな中、みんながハッピーになれる世界線に向け、動き出したのがすい(飯豊まりえ)だ。少し前までは、スーパーに買い物に行く以外は家にこもりっきりだった彼女は、10年前の事故現場に偶然居合わせた公文のヒロインになることで、再び現実の世界に仲間入りを果たした。だが、その公文もまたある意味で“コモリビト”だったと言えよう。何度も死にたがるアガサと、何度でも彼女を救うアンディキムの関係は、そのまま公文と妹・蕾(白石聖)の関係に当てはまる。蕾を病院に隔離・監視し続けることで彼女をあらゆる脅威から守っている気でいた公文。けれど、すいに導かれるまま病院を飛び出した蕾を待っていたのは、バスから眺める虹とタバスコをいっぱいかけたピザ――1割の素敵なことだった。

 けれど、蕾以上に外の世界への恐れが強い公文は物語の最終回を書き終え、再び自分たちだけの世界にまた閉じこもろうとする。彼はきっと、アンディキムのように蕾を救うことでずっと救われてきたのだ。それは芽衣(早見あかり)が言うように“共依存”でしかなく、優しい物語に見えて待ち受けているのはまた悲劇でしかない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる