『MEG ザ・モンスターズ2』は「俺の負けです」だらけ ステイサムの“異常活躍”を堪能せよ

『MEG2』は「俺の負けです」だらけ

 「メガロドンとジェイソン・ステイサムが戦ったら、やばくね?」そんな小学5年生みたいな発想で撮られた傑作サメ映画『MEG ザ・モンスター』(2018年)がパワーアップして帰ってきた。このパワーアップというのが文字通りのパワーアップで、前作では2匹しか出なかったメガロドンを3匹に増やし、ついでに巨大タコも出し、さらには古代の人喰いトカゲも添え、そしてジェイソン・ステイサムはよりジェイソン・ステイサムに……そんな引き算知らずの無法な続編映画『MEG ザ・モンスターズ2』が絶賛公開中だ。8月は終わっても、本作を観なければ夏は終わらない。まだ夏に取り残されている人のために『MEG ザ・モンスターズ2』の魅力をご紹介。

 まず最初に言っておくと、サメ映画の脚本に文句を言うのはダビデ像のペニスの大きさに文句を言うようなものだ。なのでこれから本作の脚本がどれほど薄っぺらで酷いかを述べたとしても、それ自体が『MEG ザ・モンスターズ2』の価値を貶めることにはならない。それを念頭に入れてもらった上で述べさせてもらうと、本作の脚本は薄っぺらい。サメが出てくるまではとにかく退屈だし深海の探査パートなんて傑作深海ホラー『アンダーウォーター』(2020年)をサラサラに薄めたような味わいだ。映画は物語を積み重ねて積み重ねて盛り上がりを迎えるが、藁半紙みたいに薄っぺらい脚本は、積み重ねても積み重ねても盛り上がることはない。ただしそれは、巨大なサメが頭の悪い名前の島で遊んでいる人間を無惨に食べる展開と、ジェイソン・ステイサムが異常活躍する展開が無かった場合に限る。

 時々、映画を観ていて「これは俺の負けです」と思わされる瞬間がある。『聖闘士星矢 The Beginning』(2023年)でマーク・ダカスコスが警棒と拳銃を振り回してサイボーグ兵士をボコボコにした瞬間とか、『名探偵コナン 紺青の拳』(2019年)でマリーナベイ・サンズを爆破して屋上の船を海上に叩き落とした瞬間とか、「ちょっと困った映画だけど、こんなの見せられたらもう俺の負けです」そんなシーンがある。『MEG ザ・モンスターズ2』ではそれが深海探査パートの途中に訪れた。多分観てない人には信じてもらえないし、観た自分も未だに信じられないが、深海の基地に閉じ込められたジェイソン・ステイサムが仲間を助けるため、深海7000メートルを生身で素潜りする。

 これは「実質」とか「そう解釈できる」みたいな話ではなく、普通に、ただシンプルに、ジェイソン・ステイサムが深海7000メートルを生身で素潜りする。一応ジェイソン・ステイサムの仲間がむにゃむにゃと理屈づけていたが、どう考えても深海7000メートルを生身で泳ぐ理屈がこの世に「ジェイソン・ステイサムだから」以外に存在するとは思えない。本作には多様な深海生物が出てくるが、深海7000メートルで素潜りできるジェイソン・ステイサムは間違いなく深海生物のひとつだろう。先述した「ジェイソン・ステイサムが異常活躍する」とはつまりそういうことだ。完全に人を辞めているし、そんなものを見せられたら誰だって「これは俺の負けです」となる。恐ろしいのは、本作では「俺の負けです」と思わされる瞬間(つまりステイサムが異常活躍する瞬間)がいくつもあるということだ。

 一方、対する深海生物チームも負けていない。今回は巨大なメガロドンが3匹(前作では2匹だったので、単純な足し算2+1=3でよりすごいことがわかる)登場し、おまけに巨大ダコや古代の人喰いトカゲが襲い掛かってくる。そのため、続編映画とはかくあるべしといった感じで前作を越える勢いで人が大量に食われる。本作はアメリカと中国の合作映画なので中国資本が参入しているのだが、なにが良いってアメリカ人だろうと中国人だろうと容赦なくサメに食べられるのが良い。中国資本だろうとなんだろうとサメは気にしないし、なんなら出資した中国企業も「自国の同胞がサメに食べられる? 最高じゃん!」と思っているきらいがある。米中関係が悪化の一途をたどる今、まさかサメ映画が両国を繋ぐ架け橋になるとは誰も想像しなかっただろう。

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