米中合作『MEG』続編が大ヒットスタート 巨大サメは政治的対立も食い尽くす?

米中合作『MEG』続編が大ヒットスタート

 先週末の動員ランキングは、『MEG ザ・モンスターズ2』がオープニング3日間で動員26万8000人、興収4億3300万円をあげて初登場1位に輝いた。ここまで『君たちはどう生きるか』(先週末4位)、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(先週末7位)、『キングダム 運命の炎』(先週末3位)と首位が入れ替わってきた夏休み興行だったが、その最後に首位をかっさらっていったというだけでなく、その興収の予想外の高さも含め、思わぬ伏兵が現れたかたちだ。

 前作『MEG ザ・モンスター』が公開されたのは5年前の2018年9月。最終興収は15.3億円とそれなりに好成績と呼べるものだったが、オープニング3日間の興収比で今回の『MEG ザ・モンスターズ2』はその117%という見事な成績。しかも、各シネコンでのスクリーン割りで優遇されていない(つまり、そこまで期待されていなかった)中でその数字を叩き出したわけだ。

 5年前との大きな状況の違いとしては、その当時は増加傾向にあった米中合作のエンターテインメント大作が、コロナ禍の直前に顕著になってきた米中関係の悪化を経て、近年すっかり減っていることが挙げられる。米中合作の『MEG ザ・モンスターズ2』も、もしフランチャイズ作品として前作公開の直後から続編の開発が進んでいなかったら、実現していなかった可能性も十分にあったはずだ。しかし、結果的にはアメリカでも中国でも今作は大ヒットを記録。政治性をほとんど感じさせない巨大サメ映画という題材も功を奏して、エンターテインメントの力で国際政治の緊張関係を超えてみせた。

 コロナ禍以降の回復が遅れていた中国国内の映画興行も、『MEG ザ・モンスターズ2』が公開された8月初週には、アメリカを超えて久々に世界最大の映画マーケットに返り咲いた(※)。驚くのは、中国で『MEG ザ・モンスターズ2』はオープニング3日間で3億8100万人民元(約5370万ドル)という好成績を記録したにもかかわらず、そのさらに上にアクションサスペンス大作(つまり『MEG ザ・モンスターズ2』とざっくり同ジャンル)の国内作品が君臨していて、首位を逃していることだ。現状、中国ではハリウッド映画が当たりにくくなっているが、中国での『MEG ザ・モンスターズ2』のヒットは、米中合作ならば受け入れられる可能性を示したとも言える。ハリウッドのメジャースタジオが、このままみすみす中国の巨大マーケットを諦めるとは考えにくい。数年前までのように、今後再び米中合作が増えていく可能性も十分にありそうだ。

参照

※ https://variety.com/2023/film/news/china-box-office-no-more-bets-meg-2-1235689077/

■公開情報
『MEG ザ・モンスターズ2』
全国公開中
監督:ベン・ウィートリー
出演:ジェイソン・ステイサム、クリフ・カーティス、シエンナ・ギロリー
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
公式サイト:megthemonsters.jp

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