『VIVANT』は大文字の国家観を問い直す 役所広司の存在感に圧倒
ノコルは乃木をポリグラフにかけ、ベキはノコルの尋問を聞いて自ら問いを発する中で長年の疑問が氷解する。血のつながりを確かめる道具が、乃木家の家紋かつテントのロゴが彫られた守り刀だったことは象徴的で、科学的に結論が出る検査を馬を駆る距離の遠さで表現することで、それ自体一つのドラマとして成立させていた。DNAが一致したことでベキの信用を得た乃木は、テントの内情を知らされて、ノコルの下に配属される。そこで発揮されたのが、乃木の隠れたスペックである重さを量る能力で、テントが運営する児童養護施設で横行する不正を見抜いた。
テロを生業とするテントの実態は、国に代わって身寄りのない子どもや戦災孤児を育てる慈善事業で、約6億ドルにのぼる収入の一部はそのために使われていた。近年、テントが力を入れてきたのが土地の買い占めで、その資金を得るために大規模なテロを請け負ってきた事実を乃木は知る。「ここ半年が勝負」というベキの目的が、国家規模の領土と資源を持つ自治機構の確立にあるなら、国際秩序や国のあり方に一石を投じることになる。公安や自衛隊といった国内外の治安を担う組織を軸に据えた『VIVANT』は、大文字の国家観を視野に入れている。
役所広司は登場した瞬間から画面に目がくぎ付けになる存在感で、全編にわたって説得力を与えていた。生き別れになった息子との再会では、空白の日々とその間に積もり積もった親子の情を感じさせた。言葉にならない感情を全身で形にしてみせたのは、さすがとしか言いようがない。濃縮された時間だった。
■放送情報
日曜劇場『VIVANT』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、迫田孝也、飯沼愛、山中崇、河内大和、馬場徹、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、Nandin-Erdene Khongorzul、渡辺邦斗、古屋呂敏、内野謙太、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、二宮和也、櫻井海音、Martin Starr、Erkhembayar Ganbold、真凛、水谷果穂、井上順、林遣都、高梨臨、林泰文、吉原光夫、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、檀れい、濱田岳、坂東彌十郎、橋本さとし、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李、役所広司
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵、橋爪佳織
原作・演出:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:八津弘幸、李正美、宮本勇人、山本奈奈
音楽:千住明
製作著作:TBS
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