『最高の教師』九条が瓜生と向坂を味方に引き寄せる 松岡茉優が「なんでもします」を体現

『最高の教師』九条が瓜生を味方に引き寄せる

 1度目の人生の時と同じように、夫の蓮(松下洸平)から離婚を切り出される九条(松岡茉優)。生徒によって校舎から突き落とされたはずみで1年前にタイムリープした九条は、その犯人が誰であるのかを探ること以上に、その未来が起きないように生徒を変えていくことを決意したわけだが、同時にプライベートで生じていた後悔とも再び向き合うことになる。それは必然であり、考えようによっては向き合い方を変えるだけで変わっていく生徒たち(=他者)以上に難しいことかもしれない。

 7月22日に放送された『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)の第2話。夫からの離婚話に思い悩んでいた九条が夜道を歩いていると、突然目出し帽をかぶった2人組にカバンをひったくられそうになる。即座にそれが、教室内でクラス全員が鵜久森(芦田愛菜)へのいじめに加担していたことを示す証拠を奪いにきた、教え子の瓜生(山時聡真)と向坂(浅野峻哉)であると勘付いた九条。瓜生は家庭に問題を抱えている。そんな瓜生の様子がおかしいことを鵜久森から聞かされた九条は、家庭訪問と称して瓜生の家を訪ねるのである。

 3年D組のクラス全員が加害者となったいじめから鵜久森を救おうと手を差し伸べた前回。いじめを首謀する相楽(加藤清史郎)らクラスカーストの上位者との溝は深くなる一方で、それ以外の同調的感覚などで加担していた生徒たちを変える、言い方を変えれば味方に引き寄せる余地は十分にある。しかもそれが、相楽にこき使われている生徒であれば尚更だろう。その生徒――瓜生の家庭の問題に触れ、友情に触れ、しかもこっそりバイトを世話していたりと、九条の守備範囲はなにも学校内で起こる出来事に限らない。まさしく生徒のためなら「なんでもします」という言葉の通りだ。

 家族のために瓜生がバイトをして得た金を、母親がよそで使い込んでしまう。その結果、彼が転校してしまうという1度目の人生で起きた出来事を預言者のように本人に提示し、それでも動かない(むしろ動くことができない)生徒を半ば荒療治的に突き動かす。第1話で鵜久森にした方法と同じである。向坂を動かし、瓜生の母親から一時的な理解の言葉を促したところでめでたしめでたしと終わらせることもなく、瓜生に彼の溜め込んでいたあらゆる鬱憤をすべて“言葉”だけで母親へぶつけさせる。言葉にして相手に伝えなければなにも変わりはしない。それは九条と彼女の夫との関係にも言えることでもあろう。

 なにはともあれ瓜生の家庭の問題が解決へと向いたなか、九条は瓜生と向坂に「あなた方にはすべきことがある」と告げ、2人は後日、鵜久森に謝罪をする。こうして九条側につく生徒が徐々に増えていくというのがこのドラマの主だった流れになるのだろうか。無論、彼らがあっさり謝るのは同調的感覚で加担していたからに他ならない。こうしてドラマの作劇上は30人の生徒が3対27になったともいえるが、被害者たる鵜久森が加害者側から寝返った彼らを仲間とみなし、疑いを持たずに接するのは困難なことである。そのシーンの後に駅まで3人で向かう様子こそ、描かれてほしかった。

■放送情報
新土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:松岡茉優、芦田愛菜、奥平大兼、加藤清史郎、當真あみ、茅島みずき、山時聡真、本田仁美(AKB48)、窪塚愛流、福崎那由他、田牧そら、山下幸輝、寺本莉緒、萩原護、詩羽、田中美久(HKT48)、浅野竣哉、丈太郎、柿原りんか、橘優輝、莉子、田鍋梨々花、夏生大湖、藤嶋花音、岩瀬洋志、阪本颯希、岡井みおん、藤﨑ゆみあ、のせりん、川本光貴、白倉碧空、細田善彦、長井短、サーヤ(ラランド)、犬飼貴丈、荒川良々、松下洸平
演出:鈴木勇馬
プロデューサー:福井雄太、鈴木努、秋元孝之
チーフプロデューサー:田中宏史
主題歌:菅田将暉「ユアーズ」
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/saikyo/
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