『ルパン三世 カリオストロの城』声に出して言いたい名台詞の数々 各キャラの個性が光る

名台詞とともに振り返る『カリオストロの城』

 日本テレビ系『金曜ロードショー』で5月5日に放送となる『ルパン三世 カリオストロの城』。もしも本作の発声上映に参加するとしたら、やってみたいのはルパンや次元、銭形のとっつぁんの応援ではない。ありとあらゆる台詞に自分の声を被せて口に出すことだ。たとえスクリーンに字幕が出なくても暗唱できるくらいに、『カリオストロの城』ファンの多くは、台詞のほとんどを覚えている。映画の面白さとともにキャラクターたちの心情を表す台詞のカッコよさやかわいらしさが、心の深いところにまで刻み込まれているからだ。

「あなたの心です」

 『天空の城ラピュタ』の「バルス!」のようにファンが声を揃えて発する台詞があるとしたら、映画の終わり近くで銭形警部がクラリスに向かって言うこの言葉だろう。

 「いや、ヤツはとんでもないものを盗んでいきました」という台詞に続くこの言葉から、本作はルパン三世がクラリスという少女と交流し、その心を釘付けにする大活躍をするストーリーなのだと伺える。そして同時に、『ルパン三世』というTVアニメも映画もOVAもあるシリーズの中で、ルパンを追い続ける銭形警部が、抜きんでてカッコよく描かれた作品だということも、この台詞が象徴している。

 銭形警部は、捕まえても捕まえても、すぐに逃げられるドジなおまわりさんといった役回りを与えられたバイプレイヤーだが、本作では職務に忠実で、悪を絶対に許しておけない堅物でありながら、ロマンティックなところも持った粋な中年男だというところまで踏み込んでいる。「ルパンを追っててとんでもないものを見つけてしまったあ、どうしよう?」という台詞も、本作における名台詞であり、納谷悟朗の名演のひとつとして挙げられる。その台詞を発する時のわざとらしさに溢れた口調が、そんな銭形の小粋さを表している。

 一体、銭形警部は何を見つけたのか。それが、本作でルパンがカリオストロ公国という小国に潜入してクラリス・ド・カリオストロという大公家の姫と出会い、大冒険を繰り広げてその心を“盗む”に至る根源にある。映画の冒頭、ルパンは相棒の次元大介と共にとある国の国営カジノに潜入して大金を奪う。石川五ェ門もしっかり同行していて、追って来そうな車を切り刻む役目を果たしている。五ェ門がどこにいたか気になる人は、札束に埋もれたフィアット500の後ろの窓に注目。頭の一部が見えるはずだ。

 本作は、そんな冒頭の場面から名台詞が連発される。「ナンバー不揃いで50億はあるぞ」「札ビラのシャワーだ。それー」と次元が言い、「わー、熱い熱い。もっと埋めてちょうだいよ」とルパンが答えるやりとりが、長年の相棒感を醸し出していてたまらない。次元を演じる小林清志の声も、ルパン役の山田康雄の声もそうした関係をとことん出し切っている。2人の台詞に声を重ねてつぶやき、その関係に割り込みたい気にかられるが、直後にルパンが言う「捨てちまおう」という冷ややかな台詞で空気が一変する。

「ゴート札だよ」

 世界経済を裏から動かす偽札をつかまされたルパンの反撃。それが物語の発端となって、ルパンと次元をカリオストロ公国へと向かわせ、ラストシーンにつながる大騒動を繰り広げさせる。謎の男たちに追われるクラリスのシトロエン2CVを追って、ルパンがフィアット500を猛スピードで走らせるシーンは、世界のアニメーション史にも残るであろう圧巻の名場面だ。その途中でルパンが吐く「まくるぞー」という競輪の追い抜きを差す台詞も、観ていると自然に言葉が出てくる。

 その時はクラリスを助けられず、彼女の身と地位を狙うカリオストロ伯爵によって塔に閉じ込められてしまうが、天下の大泥棒だけあってルパンは城の中へと潜入し、どうにかこうにか塔の上にいるクラリスのところまでたどり着く。そこからのルパンによる「金庫に閉じ込められた宝石たちを救い出し、むりやり花嫁にされようとしている女の子は、緑の野に放してあげる。これみんな、ドロボーの仕事なんです」という長台詞ですら、大抵のファンは言えてしまう。舞台役者のような抑揚で、可能なら身振りすらつけて。

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