大塚明夫、新たな次元大介としての覚悟 「清志さんがくれた設計図を大切に」

大塚明夫、新たな次元大介としての覚悟

 2021年、アニメ化50周年のアニバーサリーを迎え、ファンによる人気エピソード投票を始めとして様々なイベントが催された『ルパン三世』。現在放送中のテレビシリーズ最新作『ルパン三世 PART6』は、ルパンを巡る女性の謎をテーマとした第2クールに差し掛かる。この節目に、本作より次元大介役を演じることになった大塚明夫に次元大介の演技論や、50年にわたって次元を演じてきた前任の小林清志への想いをたっぷりと語ってもらった。(のざわよしのり)

公式発表まで苦しい半年間だった

大塚明夫
大塚明夫

――いよいよ1月から2クール目を迎える『ルパン三世 PART6』ですが、1クール目がルパンVSホームズで「ミステリー」がキーワード、これからの2クール目は「女」がキーワードとなっていて、同じ作品の前半と後半とで舞台がガラッと変わりますね。

大塚明夫(以下、大塚):僕は舞台が変わることについては全然違和感がないです。もともと『ルパン三世』を観て育っていますから。ルパンはキャラデザインも作風も時代に合わせて様々な変化を遂げてきたと思うんです。だから何の引っ掛かりもないというか、1クール目から2クール目で舞台が変わっても、飛行機に乗って違う場所へ着いて「わー、今度はここか!」という感じです。

――次元大介のキャスト変更が2021年9月に発表されて、前任の小林清志さんから大塚明夫さんへ次元役を託すコメントが出ましたが、その当時の仕事仲間や周囲からの反響はいかがでしたか。

大塚:仕事仲間の反応は、だいたい(親指をグッと立てて)コレでした(笑)。僕たちと近い世代のルパン好きの人は、やはり年季の入ったオールドファンですから、好意的な温かい声が多くてホッとしました。若い世代の人からは「ちょっと違うかな」という声も少し聞こえましたが、そういった声に振り回されたらきりがないですから。メンタルが弱いもので(笑)。次元を引継ぐことは絶対にまだ言わないでくださいということで、半年ぐらい黙っていましたから、不安な気持ちも口に出せないわけです。その意味では公式発表まで苦しい半年間でした。

――バトンタッチの際に大塚さんが「次元大介から小林清志さんじゃない声が出てくるのは僕自身が嫌なんです」とコメントされていましたが、この半年間、次元という役柄をご自身でやり込んでいく中で、心境に変化はありましたか?

大塚:そこに関しては、もう(次元は)清志さんではないわけなので……じゃあどうするかと自分にできることは、清志さんのフェイクとしてどこまで行けるか、ということしかないんです。楽器が変われば出てくる音も変わるように、自分がどう演じても100%これで間違いないというものは出てこないんです。清志さんがどういう風に次元大介を作ろうとしていたのか? その設計図みたいなものを読み取るようにして行くと、単に音で拾ってそれをコピーするというのとは、違うアプローチができると思うんです。だからその精度を上げていくってことかな。清志さんの声じゃないんだけれど、でも清志さんが喋っている次元じゃないかという錯覚を(視聴者に)起こせるぐらいまでなれば良いなと思います。やはり次元は清志さんが吹き込んでいたように喋ってほしいし、僕自身もそう聴きたいですから。

――栗田貫一さんは今でも山田康雄さん時代の『ルパン三世』の本編を観て、イメージトレーニングしてから本番に臨むそうですけど、大塚さんもアフレコ前に小林さんの次元を見直すようなことをしていますか?

大塚:今はYouTubeという便利なものがありまして、公式チャンネルで『ルパン三世』の配信をしているので、リハーサルの前後にランダムに拾って観ています。次元大介メイン回などテーマを決めて集めたものもあり、例え次元がメインではない回であっても、『ルパン三世』の世界を観ることでノリが良くなるということを感じます。最低でも1話ぐらいは流してから(本番に)行きます。

――次元の主演エピソードでお好きなものはありますか?

大塚:やはり『荒野に散ったコンバットマグナム』(PART2の第99話)はすごく面白いですし、亡命するバレリーナを助ける話『国境は別れの顔』(PART2の第58話)も好きです。だけど次元のメイン回が格好いいのは当たり前ですし、むしろルパンがメインのオーソドックスな回で、次元がふと見せる芝居がすごく良かったりするんです。次元あまり前に出ない方が格好いいのかな、というのはあります。なんというか……僕は“次元主演回じゃない時の次元”が好きなんです。

――なるほど! 大塚さんは、小林清志さんや山田康雄さん(初代・ルパン三世役)、納谷悟朗さん(初代・銭形警部役)たちが出ていた頃の『ルパン三世』にも幾度かゲスト出演されたことがありますが、その時のスタジオの雰囲気など、覚えていたら教えていただけますか。

大塚:“乱暴なんだけど信頼し合っている”、そんな雰囲気の現場でした。「バーカ(笑)」なんて言い合ったりしながら悟朗さんが足で蹴るような真似をして。悟朗さんは御年を召されても、軸足がそのままスッと横に動いて蹴りの真似ができるほどすごかったんですよ。それで清志さんが「今、(バカって)言ったじゃねぇか」なんて返すと「言ってねーよ!」と悟朗さんが答えて。それでまた清志さんが「えっ、そう……?」なんてやりとりをしながら。あの空気感は、僕ら駆け出しは遠くからワクワクしながら見ているしかない、そんな羨ましい感じがしました。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる