『リバーサルオーケストラ』はドキュメンタリーのようなドラマだ 心を掴む“裏側”の演出

『リバーサルオーケストラ』秀逸な裏側の演出

 エンターテインメントの力、音楽の偉大さを改めて教えてくれた『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)が、約3カ月の旅を経て幕を閉じる。毎週水曜日「週末に向かって頑張ろう!」と元気をくれたこの物語は、いつの間にか、登場人物たちを愛してしまうドラマだった。

 目には見えないギミックが多かった本作。たとえば、オーケストラは何十人といるし、主要キャストだけでもたくさんいるから、どうしても主人公・谷岡初音(門脇麦)や、天才マエストロ・常葉朝陽(田中圭)に目がいきがち。けれど、金銭問題、娘の受験、妻の認知症……と団員の抱える問題に、しっかりとスポットを当てて解決に導くから、それぞれの内情が分かって登場人物に感情移入できた。だから全員を好きになる。だから「児玉交響楽団(通称:玉響)」を応援したくなる!

『リバーサルオーケストラ』は全ての社会人に寄り添う “大人の青春群像劇”の面白さ

多くの人が集まり合奏するオーケストラを舞台に、音楽の楽しさや夢を追いかけ続ける辛さなどを描いたドラマ『リバーサルオーケストラ』(…

 各キャラクターの人柄も魅力的だった。ツンツンしているのに、ここぞというときにスッと手を差し伸べる朝陽、そんな彼にイライラしながらもようやく想いを伝えた初音。トラウマを払拭して玉響のために走り回る彼女が印象的だった。そのほか、佐々木玲緒(瀧内公美)、庄司蒼(坂東龍汰)、土井琢郎(前野朋哉)、桃井みどり(濱田マリ)、小野田隼(岡部たかし)など、魅力を語りたい団員や主要人物は山ほどいる。

 玉響の活動を邪魔する市議会議員・本宮雄一(津田健次郎)だって私は好きだ。彼のやっていることは最低最悪ではあるものの、個人的には暗い影を落とすような存在ではないと思っている。もちろん、それで玉響が解散となったら憎んでしまうが(前回怪しかったけど)、やることなすこと全部解決されて、逆に玉響の団結力を高める結果に……。彼が顔面蒼白になる場面を何度見たことか! 本宮のちょっと“抜けてる”ところが、可愛いとすら思ってしまう。

 そんなわかりやすい悪役、みんなで困難に立ち向かう姿、そして初音たちの恋愛など、面白くならないわけがない要素に加えて、『リバーサルオーケストラ』最大の特徴となっているのが演奏シーンである。

 「運命」「カルメン組曲」など聴き馴染みのある楽曲とともに、玉響の心踊る演奏が長尺で楽しめる本作。ときには笑顔で、ときには真剣な表情で楽器とひとつになる団員たちの表情を見ると、感動を超えて涙が出そうになるし、曲によって感情が変わる朝陽の指揮にも魅了される。普段がクールなだけに、朝陽の音楽への情熱と愛が伝わる姿に胸が熱くなるのだ。

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