『リバーサルオーケストラ』は全ての社会人に寄り添う “大人の青春群像劇”の面白さ

『リバーサルオーケストラ』の面白さを解説

 多くの人が集まり合奏するオーケストラを舞台に、音楽の楽しさや夢を追いかけ続ける辛さなどを描いたドラマ『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)が現在放送されている。本作は、門脇麦演じる元天才ヴァイオリニストの谷岡初音が、田中圭演じる新進気鋭のマエストロ・常葉朝陽と共に地元の交響楽団を一流のオケへと成長させていくストーリー。公式サイトでは「一発逆転の音楽エンターテイメント」と銘打たれているが、本作は音楽を題材にしたエンタメに加え、“大人の青春群像劇”としても楽しめる内容だ。

 そもそも青春というのは生涯において若く元気な時代や青年期を指す言葉だが、青春という言葉からイメージするものは夢を追いかけることや仲間と共に目標へ向かって頑張ること、その過程での挫折などとも繋がる。本作は音楽の楽しさのみならず音楽を続けていくことや音楽で生活していくことなどの難しさも取り上げており、青春と呼べる要素が多く感じられる。またオーケストラを題材にすることで多くのキャラクターが登場し、個々に焦点を当てることで毎週異なる団員の葛藤や挫折、大人として置かれている状況が音楽家活動に影響を及ぼしオケ全体の問題となっていく様子も描かれる。

 TVドラマの視聴者層はやはり大人の方が多く、社会に揉まれる大人の視聴者が共感できて楽しめるエンタメ作品が多く制作されている。会社や日々の苦悩を描きつつ、そこに他者からの支えや希望も描くことは視聴者からの共感を得やすくなり、作品のヒットに繋がっているはずだ。

 大人の青春群像劇といえば、2022年7月期のドラマでは、ベンチャー企業を舞台に社会人としてあらゆる困難や課題を会社というチームでひとつずつ乗り越える大人の青春を描いた『ユニコーンに乗って』(TBS系)が放送された。また、2014年には定時制高校を舞台に老若男女様々な世代の生徒が高校卒業を目標に、個々人の苦悩や困難を通してクラスメイトとの繋がりから希望を見出す『夜のせんせい』(TBS系)が放送された。どの作品も舞台や題材は異なるが、社会に出た大人がぶち当たる壁や人間関係におけるすれ違い、夢や目標を持ち続けることの難しさなどを描いており、大人だからこそより深く共感できる青春ストーリーが多く盛り込まれている。学生時代とは異なる苦労や、大人だからこそ感じられる楽しさや視野の広さを描けるのも、大人の青春群像劇の魅力だ。

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