『星降る夜に』北村匠海演じる“わんこ系年下男子”の包容力 “謎の男”ムロツヨシが姿を現す

『星降る夜に』北村匠海演じる一星の包容力

「明日死んでも悔いがないように。俺は伝え続けるよ。鈴、好きだ」

 誰にだって死は生の続きにある。そうわかっていても、人は当たり前に明日が来ると思ってしまう生き物だから。誰かを大切に思う気持ちは意識的に伝えていきたいと思った。ドラマ『星降る夜に』(テレビ朝日系)第6話では、そんな悔いのない日々を過ごそうと、登場人物たちがそれぞれの思いを精いっぱい伝えていく姿が印象的だった。

 まず、最初に伝えられたのは一星(北村匠海)から鈴(吉高由里子)への率直な謝罪。何者かに襲われた鈴を守りたかった一星だが、自分よりも先に深夜(ディーン・フジオカ)が駆けつけたことに思わず嫉妬してしまった。そのやるせない思いをそのまま鈴にぶつけてしまった自分の不甲斐なさを反省するのだった。

 一星の魅力は、何よりもこの素直さにある。面白くない気分だったり、納得のいかないといった感情にもまっすぐだが、自分がよくなかったと省みるスピードも早い。だからこそ、鈴も「すぐすねる!」とツッコミながらも一星がかわいくてしかたないのだろう。

 そして、そんな一星のそばで過ごすからこそ、鈴の心もずっと柔軟になってきたように思う。マロニエ産婦人科医院の看護師長・犬山(猫背椿)が、元レディース“ピンクエンペラー”の総長だったという経歴を活かして、鈴の自宅周辺を気合の入った後輩たちにパトロールさせていたことがわかった時も、変に恐縮したりせず素直にその好意に感謝する。そして、「これからも頼らせてください」とも。

 お互いを許し合える空気感とは、こういうところから生まれるのかもしれない。頼り頼られることで、お互いここにいていいんだと思える。もしかしたら、以前の鈴だったら1人でなんとかしようと頑張って、もっと追い詰められていたかもしれない。でも、一星と出会えた鈴は、こんなにも怖い思いをした今でも「幸せだ」とよく笑うことができている。

 そして、ふと気づくのだ。“わんこ系年下男子”とは言われながらも、一星の毅然とした鈴への想いという頼もしさが、大人の男代表にも思えた深夜にも負けない包容力を生み出していることを。

 例えば2人が一緒に暮らす部屋を探すときにも、鈴は遠慮なく「電車の音がうるさい」と言える。気を使いすぎたり、同情的になったりせず、思ったことをそのまま伝えられる安心感。すぐにじゃれ合うように会話を楽しむ2人がなんともかわいらしいのは、その信頼関係が生まれているのがわかるからだろう。

 一方、遺品整理会社「ポラリス」の社長・北斗千明(水野美紀)の娘である桜(吉柳咲良)の恋心も一星に伝えられた。「ただ伝えたかった」とは言うものの、やはり実らない恋は辛いもの。そんな胸の苦しみを千明の前では微塵も感じさせずに、部屋で一人涙を流す。そんな青春の痛みを味わっているタイミングで、桜の産みの母から「会いたい」という連絡もやって来る。

 千明には、その手紙を見せないという選択肢もあった。でも、それは彼女の性格上できなかったのだろう。桜の気持ちを一番に尊重したい。でも、その内心は「もう帰ってこなかったらどうしよう」と不安で深夜相手に酒を飲まずにはいられないほど。そんな苦しみを桜には見せまいとするところが実によく似ている。2人は血のつながりがなくとも、すっかり親子なんだと感じずにはいられなかった。

 生みの親に会いに行くのに、鈴に付き添いを頼んだのも、桜らしさを表しているようだった。一星がどんな人を好きなのかを知ること、そして自分を捨てた実母がどんな人なのかを見に行くこと。いずれも今抱えているモヤモヤを一気に片付けようとしているようで……。その強さも、きっと千明譲りなのだろう。別の女性のもとへ行ってしまった元夫。その喪失感も想像に難くないが、その連れ子である桜を守り、育てていく覚悟も相当なものだったに違いない。その背中を見てきたからこそ、桜の今があるのだと思う。

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