松山ケンイチ&山田孝之、名コンビの予感! 『どうする家康』にもたらした“軽さと深み”
半蔵は常に視線を下に落とし、誰とも目を合わせない。自信のなさにも見えるが、忍びはやるなという父の遺言に背いた後ろめたさ、忍びへの嫌悪感なども感じられる。配下の伊賀者たちとは対照的に、任務に向かう半蔵の足取りは重い。しかし、本人は気が向かないのかもしれないが、半蔵の呼びかけに従う大鼠(千葉哲也)や穴熊(川畑和雄)の様子を見る限り、忍びの党首として慕われているように見える。
関口家も助け出すことになり、半蔵が「大鼠、穴熊、できるか?」と問いかけると、彼らは「俺らぁできるかできねえかは考えません。やれと言われたことをやるだけで」「銭さえもらえりゃあ」と答える。半蔵にとっては忍びの仕事をより嫌うことになる回答だったかもしれない。けれど、瀬名奪還作戦が失敗したとき、半蔵は真意を知ることになった。穴熊は命を落とし、大鼠は大怪我を負った。大鼠は命を賭して半蔵を逃がす際にこう伝える。
「半蔵様が死んだら、誰が俺らの妻や子に銭を渡してくださる?」
「服部党はまだまだおります。我らの子や孫が。どうぞやり遂げて、銭をた〜んとくれてやってくだせえ」
忍び働きをするのは、一族を、家族を食べさせるため。逃げおおせた半蔵が、正信がいる横で静かに涙を流す姿が切ない。
大鼠の言葉は、半蔵の心を動かしたに違いない。元康の前で頭を下げる正信が新たな策を口にすると、数正と忠次は「お主らに何ができる!」「服部党は皆殺しにされたのだろう」と憤った。その言葉に半蔵は、目線こそ合わせないもののやや顔を上げ、「まだおります。俺ら服部党はまだ死んじゃおりません」と答える。半蔵は決して忍びを肯定したわけではないはずだが、果たすべき務めを見出したのかもしれない。
劇中、忍びとしての腕が衰えている半蔵に、正信が「えっ?」「うん? おい!」と声をあげ、半蔵が気まずい表情になるなど、正信と半蔵の掛け合いにはクスリとしてしまうものが多かった。口ばかりでいい加減な正信と陰気な雰囲気が漂う半蔵、この独特な空気が漂う名コンビの活躍に期待が高まる。
■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK