藤津亮太の「2022年 年間ベストアニメTOP10」 アニメを豊かにする“遠心力”のある作品

藤津亮太の「2022年アニメTOP10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2022年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、アニメの場合は、2022年に日本で劇場公開・放送・配信されたアニメーションから、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第5回の選者は、アニメ評論家の藤津亮太。(編集部)

・『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』
・『アキバ冥途戦争』
・『雨を告げる漂流団地』
・『ぼくらのよあけ』
・『地球外少年少女』
・『グッバイ、ドン・グリーズ!』
・『かがみの孤城』
・『ONI〜神々山のおなり』
・『犬王』
・『サイバーパンク:エッジランナーズ』
※順不同

 今年はTV、映画ともに魅力ある作品が多く、なにをどう選べばいいか、かなり難しかった。最終的に、ファンをとらえ離さない「求心力」よりは、アニメというジャンルのバラエティを豊かにする「遠心力」のほうを重視して、10作品をセレクトしてみた。並び順に意味はなく順不同だが、共通のキーワードで2〜3作品を括るようにした。

「続きが気になる」エンタメ作

TVアニメ『BIRDIE WING ‐Golf Girls' Story‐』本PV

 『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』はゴルフを題材にしているが、スポーツとしてのゴルフを描くというより、ケレン味のあるバトルもので、それはどこか懐かしさも感じさせる。『アキバ冥途戦争』はメイド喫茶とヤクザの抗争をかけ合わせ、ブラックユーモアと昭和の叙情で魅せていく。どちらもアニメとしてはかなり意表をつく題材を取り上げつつ、「続きが気になる」エンタメにきっちり昇華している。

「未来は少年少女のためにある」ジュブナイル作

『雨を告げる漂流団地』予告編 - Netflix

 ジュブナイルが多かったのも本年の特徴。『雨を告げる漂流団地』『ぼくらのよあけ』『地球外少年少女』はそれを象徴する3作品。『雨を告げる漂流団地』は団地とともに異世界を漂流することになった小学生たちの冒険譚。それは彼らが、過去を過去と受け入れるための旅でもあった。『ぼくらのよあけ』は、遥か彼方の宇宙から到来した宇宙船と子供たちのファーストコンタクトを描く。別れの寂しさとスケールの大きな未来への希望が一体となったラストがSFらしさを感じさせる。『地球外少年少女』はAIの普及と宇宙開発が日常になった世界を舞台に、未来に待つ無限の可能性を直球で描き出した。いずれも「未来は少年少女のためにある」という姿勢が共通している。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる