『かがみの孤城』“伏線回収”で片付けたくない怒涛のラスト 積み重ねた人生の先にあるもの

『かがみの孤城』は悩み抜いたすべての人に

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、メリー・クリスマス!石井が『かがみの孤城』をプッシュします。

『かがみの孤城』

 今年はアニメを意識的に観た1年。ファンの方々からすれば「今さら?」の一言かと思いますが、特に『宇宙よりも遠い場所』『SHIROBAKO』『STEINS;GATE』に、のめり込み、通勤の電車で観るのが楽しみな時間のひとつでした。電車内でスマホを観ながら涙目になっていたアラフォー男性を見かけた方がいたら、それは自分かもしれません。

 3作品とも作品内では描かれていない部分も含めた各キャラクターの過去、もっと大きな言葉で言えば人生の積み重ねが見えて、いつしか彼らの人生に入り込み、終盤の展開は涙なしには観られませんでした。年齢も職業も環境も自分とはかけ離れたものがあったにもかかわらずです。優れた作品は実写もアニメもそうだと思いますが、「またあいつらに会いたい!」と思わずにはいられないキャラクターたちがたくさんいました。

映画『かがみの孤城』予告編【12月23日(金)全国公開】

 そんな3作品に感じた思いとも重なる点が多かったのが、映画『かがみの孤城』。辻村深月さんのベストセラー小説を、大傑作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』の原恵一監督が映画化ということで、観る前から“間違いない”作品とは感じていましたが、その期待値を超えていきました。本作の予告編の最後には、「きっと“人生の宝物”になる」の一文があります。予告編などにある「全米が泣いた」をはじめとした大仰なキャッチコピーには辟易させられるものがありますが、この一文は観た後だと決して誇張ではないと思えます。ただ、感情移入力が高めの方、劇中の登場人物たちと同様の経験がある方にとっては、“劇薬”にも成り得る一作ではあると感じました。

 予告編やあらすじ紹介にもあるので書いてしまいますが、本作のメインキャラクターとなる7人は、さまざまな理由で学校に行くことができなくなった中学生たちです。彼らのように不登校となった経験はなくとも、学生はもちろん、社会人も、多くの人が学校や会社に行きたくないと思ったことはあるのではないでしょうか。

 主人公・こころは転校生と仲良くなったことで、クラス内の“リア充”女子たちのターゲットにされ、いじめを受けて不登校に。こころへの「死ね!」の一言をはじめ、教師を味方につける、男子生徒を利用するなど、そのいじめはあまりにもむごく、怒りが湧き上がってくるほど。本作が恐ろしいのは、こころが感じる恐怖や怒りがあまりにもリアルな点であることです。原監督は過去作『河童のクゥと夏休み』『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』などでも人間の悪意を見事に演出していましたが、本作でもそれが遺憾なく発揮されています。

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