藤津亮太の「2022年 年間ベストアニメTOP10」 アニメを豊かにする“遠心力”のある作品

藤津亮太の「2022年アニメTOP10」

自分の世界を一変させる“何か”

映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』本予告ロングver.

 『グッバイ、ドン・グリーズ!』『かがみの孤城』『ONI〜神々山のおなり』は、「今、自分のいる場所を相対化すると見えてくるもの」をそれぞれの演出スタイルで提示した。『グッバイ、ドン・グリーズ!』は“赤い色”を映画の要所に配すことで、それを主人公たちの認識を変える糸口とした。『かがみの孤城』は冒頭、黒バックに学校で使う机と椅子を見せ、タイトルを重ねる。登場人物たちがいる「孤城(敵に囲まれて、孤立している城)」という状況を、端的に机に象徴してみせるところから語り始めた。『ONI』は、作中でオニと呼ばれる存在がなにかが明かされる中盤の驚きの展開と、そのショックを乗り越える食事のシーンが胸に響く。3作とも、自分の世界を一変させる“何か”は、いろんなところに潜んでいることを感じさせる作品だ。

語られることのない“伝説”の実態

劇場アニメーション『犬王』本予告

 『犬王』と『サイバーパンク:エッジランナーズ』は、語られることのない“伝説”の実態を描いた作品。『犬王』は能楽師・犬王と琵琶法師・友有/友魚が語る“平家物語”は、現代に伝えられることがなかった忘れられた無数の“平家物語”。それらが忘れられたように、彼らの存在もまた表舞台から消えていく。『サイバーパンク』のほうは、原作ゲームでカクテル名にその名を残した男、デイヴィッドの人生を描いた。どちらも画面から溢れんばかりのエネルギーが伝わってくる出来栄えで、観客の心を奪っていく。

 このほか、群雄割拠のアイドルものの中で、丁寧な人物演出が光ったTV『シャインポスト』、SF的な設定の青春ものを切れ味のいい演出で見せた映画『夏へのトンネル、さよならの出口』も印象に残った。

■公開情報
『かがみの孤城』
全国公開中
声の出演:當真あみ、北村匠海、吉柳咲良、板垣李光人、横溝菜帆、高山みなみ、梶裕貴、矢島晶子、美山加恋、池端杏慈、吉村文香、藤森慎吾、滝沢カレン、麻生久美子、芦田愛菜、宮﨑あおい
監督:原恵一
脚本:丸尾みほ
キャラクターデザイン・総作画監督:佐々木啓悟
ビジュアルコンセプト・孤城デザイン:イリヤ・クブシノブ
音楽:富貴晴美
主題歌:優里「メリーゴーランド」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
企画・製作幹事:松竹、日本テレビ放送網
原作:辻村深月『かがみの孤城』(ポプラ社)
制作:A-1 Pictures
配給:松竹
©︎2022「かがみの孤城」製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/kagaminokojo/

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