『水星の魔女』スレッタの性格はアムロかベルリか? ガンダムの歴代パイロットから考察

『水星の魔女』スレッタのキャラクターを考察

 ガンダムのテレビシリーズで初めて女性が主人公となる『機動戦士ガンダム 水星の魔女』。辺境の水星からアスティカシア高等専門学校に編入したスレッタ・マーキュリーが、ミオリネ・レンブランという少女の花婿を決める決闘に勝利して起こった騒動から幕を開けた物語の行方が気になって仕方がない。そこでスレッタのキャラクター性に着目し、『機動戦士ガンダム』のアムロ・レイをはじめとしたガンダム乗りたちがどのようなキャラクターだったかを振り返ることで、これからの展開やスレッタの運命を占ってみた。

 『機動戦士ガンダム』の主人公、アムロを演じた声優の古谷徹がインタビューでよく答えているのが、アムロは自身のキャリアに転機をもたらす役だったということだ。『巨人の星』の星飛雄馬に象徴される熱血少年役が得意と見られ、そうした役ばかり演じていく中で感じた限界が、アムロを演じたことで取り払われた。

第1話|機動戦士ガンダム【ガンチャン】

 第1話「ガンダム大地に立つ!!」でアムロが言う「ハロ、今日も元気だね」というセリフには、熱血ぶりはまるで感じられず、どちらかといえば内向的な性格がうかがえる。古谷はここから新しい引き出しを得たが、逆にガンダムシリーズでは、アムロの性格付けが出発点となって、自己中心的とかわがままといったネガティブな傾向を持つキャラクターが、主人公のスタンダードになった。

 誰よりもガンダムをうまく操縦できて、ジオン軍の中でも飛び抜けた戦闘力を誇るシャア・アズナブルをも退ける活躍を見せるが、叱られればいじけ、役割を放棄してガンダムごと逃げ出すアムロは、何があっても正義のために戦い抜くといった古典的なヒーロー像から外れていた。それでいてガンダムを駆って戦う中でニュータイプとして覚醒し、連邦を勝利に導く。

 ナイーブな天才。そんな主人公像は『機動戦士Zガンダム』のカミーユ・ビダンや『機動戦士ガンダムUC』のバナージ・リンクスにも引き継がれ、悩み考えながら成長し、戦闘においても決定的な強さを見せる存在として描かれた。見る側としてもそこに自分を投影し、時に同族嫌悪を覚えながらも共に成長していく感じを味わえるキャラクターとして支持をした。

第1話|Ζガンダム【ガンチャン】

 スレッタはどうか。編入生としておどおどとした態度を見せるところはアムロのようなネガティブさを感じさせる。学園でもトップクラスのモビルスーツ乗りを愛機のエアリアルで一蹴する天才ぶりもアムロやカミーユと共通する。ミオリネではうまく扱えなかったエアリアルの性能を引き出すあたりは、ユニコーンガンダムのサイコフレームを緑に光らせ、強敵を薙ぎ倒していくバナージとマシンとの結びつきを思い起こさせる。

 事前に配信された前日譚『機動戦士ガンダム 水星の魔女 PROLOGUE』には、エアリアルによく似た機体のガンダム・ルブリルを、テストパイロットのエルノラ・サマヤではどうしても起動させられなかったにも関わらず、幼い娘のエリクトがなぜか動かしてしまう場面が登場する。この世界のガンダムには意思のようなものがあり、ユニコーンガンダムのようにパイロットとの繋がりを必要とするのだろうか。そんな想像が浮かんで来る。

 だったらスレッタはアムロタイプかというと、性格がポジティブ過ぎるところとがまるで正反対。むしろ『ガンダム Gのレコンギスタ』に登場するベルリ・ゼナムに近い。地上と宇宙を繋ぐ軌道エレベーターを守る「キャピタル・ガード」の養成学校でパイロットの訓練を受けているベルリは、有力者を母親に持ち自身も才能に溢れながら、それをひけらかすことなく周囲と分け隔てなく接して好かれている。

第1話|Gレコ【ガンチャン】

 そのベルリが、スペースコロニー国家のトワサンガから地球にもたらされたG-セルフをなぜか動かせてしまったところは、メカに選ばれた乗り手というパターンとしてスレッタにも当てはまる。攻めてきた海賊部隊を撃退し、捕らえたアイーダ・レイハントンに一目惚れし、共にトワサンガを経て金星圏にあるビーナス・グロゥブへと旅をする中で近しい関係になっていく展開で、ベルリが何かに悩んで逃げ出すような描写はない。これも、逃げるより進む方を選ぶスレッタと共通するキャラクター性だ。

 アイーダの思い人だったカーヒル・セイントをその手にかけても、ベルリがアイーダに臆することはない。フォトン・トルピードという大技を繰り出し、大量のモビルスーツ乗りを乗機ごと消滅させてもまるで引きずらない。「遊びなもんか! 自分が死ぬのも、人が死ぬのも冗談じゃないって思うから、やれることをやってるんでしょう!」と言いながら戦うバナージが、人の死を常に意識しているのとは大違い。そこまでスレッタが楽天的かは不明だが、屈託のなさは共通しているように見える。

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