『ククルス・ドアンの島』で初めてガンダムに触れた方へ オススメ過去作品をピックアップ

『ククルス・ドアンの島』関連過去作を紹介

 現在、全国の映画館で上映中の『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』が、順調に観客動員数を伸ばしている。6月3日に184館で公開された本作は、2日間で動員数約15万人、興行収入は約3億円になったと舞台挨拶で触れられた。さらに6月19日には動員数43万人、興行収入が8億5千万円を突破したと配給元の松竹から発表された。この映画の感想に「あまりガンダムに詳しくないけど、観に行ったら面白かった」という声が多く見受けられる。テレビアニメ『機動戦士ガンダム』(1979年)のメインスタッフだった安彦良和が監督を務める43年ぶりの新作映画という話題性から、熱狂的ファンが映画館に詰めかけたのはもちろんだろうが、ディープなガンダムファン以外の人たちも惹きつけたところに成功の鍵があったのかもしれない。

 『ククルス・ドアンの島』がガンダム初見の人を含めて広い客層に受けた要因はいろいろあるだろうが、まず1話完結のテレビエピソードの映画化なので、映画の中だけで起承転結が味わえること、ガンダムの基本設定を詳しく把握しなくても、それほど支障がない筋運びであること、加えてメインキャラクターのドアンが多くの戦災孤児を匿っている脱走兵といった設定なのも見逃せない。監督の安彦良和は、この映画を「名もなき小さな者たちの物語」と語るが、一般市民が巻き添えで苦しむ戦争が海外で起きている時期に公開されたのも、タイミング的に意義深いことであろう。そこで本稿では、『ククルス・ドアンの島』を楽しめた若年層ファンに、ぜひオススメしたいガンダムシリーズを挙げていこうと思う。流石に1年間4クールのシリーズものを観ろというのは酷な話なので、配信やレンタルでも低カロリーで視聴できる範囲でピックアップしていこう。

『機動戦士ガンダム』第28話「大西洋、血に染めて」

 まずはテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の第28話「大西洋、血に染めて」。幼い弟と妹を養うためにジオン軍のスパイとして雇われている少女ミハルがゲストキャラクターで登場する。ミハルは連邦軍の制服を着てホワイトベースに密航し、スパイ活動で進路情報をジオン軍に報せるが、後に自分の行いを悔いてジオン軍への攻撃を手伝うのだ。戦争のために望まない生き方をした民間人の少女の悲劇を描いた内容としてファンの評価が高いエピソードだが、映画『ククルス・ドアンの島』でホワイトベースが次に向かう目的地ベルファストを舞台にした事件でもある。ミハルの弟と妹のその後は、安彦良和の漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の外伝エピソード「アルテイシア 0083」で少し触れられている。

『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』

 次に全6話のOVAでリリースされた『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(1989年)。主人公は小学5年生の少年アルフレッド・イズルハこと通称アル。アルと並ぶもう一人の主人公に、ジオン軍の若きパイロット、バーニィことバーナード・ワイズマン。通例、ガンダムシリーズは連邦軍側のパイロットがメインキャラクターとして活躍する作品が多いが、本作のように民間人の子どもとジオンのパイロットをドラマの軸にしたものは珍しい。戦争の残酷さや、親しい人の悲惨な末路を子どもの目を通して描いたガンダム作品としても評価が高く、報道写真のようなスケッチと共に流れる椎名恵歌唱のエンディングテーマ「遠い記憶」も含めて、是非観ていただきたい一篇。

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