『水星の魔女』に込められた『ガンダム』の“自由”さ 岡本拓也プロデューサーに狙いを聞く

『水星の魔女』岡本拓也Pインタビュー

 “ガンダム”とひとくちに言っても、そのシリーズの広がり方は果てしなく膨大だ。原点である『機動戦士ガンダム』(1979年)から始まる宇宙世紀を舞台にした作品群が、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021年)まで40年以上も脈々と続いている。一方で『機動武闘伝Gガンダム』(1994年)に端を発す、独自の世界観と宇宙世紀とは別の舞台で展開する作品群が、『新機動戦記ガンダムW』(1995年)や『機動戦士ガンダムSEED』(2002年)などを経て、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(2015年)まで制作されている。

 そして2022年10月、『鉄血のオルフェンズ』以来7年ぶりに、日曜夕方17時の放送枠に『ガンダム』が帰ってきた。最新作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』だ。数多くの企業が宇宙に進出して巨大経済圏が構築されている時代、A.S(アド・ステラ)122を舞台に、水星から来た1人の少女が高等専門学園に編入してくることで物語の幕を開ける。今回は本作の岡本拓也プロデューサーに、『水星の魔女』の企画経緯やスタッフに関する話、そして本編の前日譚「PROLOGUE」に語ってもらった。(のざわよしのり)

学園を舞台にした意図

――7年ぶりの『ガンダム』TVシリーズということですが、企画がスタートした経緯からお伺いしたいと思います。

岡本拓也(以下・岡本):ガンダム50周年、60周年に向けて、次の世代をターゲットにしたものを作りたいと2018年ぐらいから企画がスタートしたと聞いています。女性を主人公としたガンダムを作るということで、私のところに話が来たのが2020年の初春だったと思います。

――学園が舞台になる『ガンダム』というのは初めてだと思うのですが、こういう内容になったのはどういったところからでしょう?

岡本:先ほど本作のターゲット層は次の世代を見据えているという話をしましたが、学園を舞台にしようと決める前に10代の方たちに話を聞く機会があったんです。その時に“ガンダムは僕らの世代に向けたものじゃない”とか、“タイトルにガンダムって付いていたら観ません”という言葉がありました。それは結構、心に刺さりましたね。長く続いている宇宙世紀を舞台にした作品群もそうですが、宇宙世紀以外を舞台にした作品群も『SEED』から数えても、もう20年経っている。そういう歴史の長さがある種の壁にもなって、新たに入りづらくなっている。今までも若い方々に観ていただけるような工夫は色々とされていたと思うのですが、彼らの最も身近な環境から始まる作品があっても良いんじゃないか、ということから学園を舞台にしようという話が上がってきたんです。

――次にスタッフィングについて伺っていきたいと思います。モグモさんは『ガンダム』シリーズ初起用の方ですよね?

岡本:はい。モグモさんにはキャラクターデザインの原案をお願いしています。それに加えて小林(寛)監督も絵が達者な方なので、監督から絵としてアイデアが出てくることもあるんです。そこからキャッチボールでキャラを描き起こしていくこともあります。

――メカデザインに関しましては、JNTHED(ジェイエヌティーヘッド・以下JNT)さんを筆頭に6人ものデザイナーを配しています。これは、どの陣営のメカは誰、というふうにデザインの担当がそれぞれ違うのですか?

岡本:そうですね。ある程度、勢力ごとに分けて作業していただいてます。JNTさんはガンダム・エアリアルやガンダム・ルブリスなど主役系のモビルスーツをお願いしています。そして海老川兼武さんにはシャディク・ゼネリがいるグラスレー社のモビルスーツ、形部一平さんはグエル・ジェタークのジェターク社に所属するモビルスーツ、そして稲田航さんにエラン・ケレスの後ろ盾にあるペイル社のモビルスーツをお願いしています。柳瀬敬之さん、寺岡賢司さんなどにも、他勢力をお願いしているという感じですね。モビルスーツだけでなく、他に登場するメカニカルなものや衣装など、様々なデザインを皆さんにご相談しています。

――今回、前日譚となる「PROLOGUE」を先行で公開しました。こういうプロモーションは従来のガンダム作品ではなかったのですが、この宣伝手法を使った狙いは何ですか?

岡本:これは7年ぶりの『ガンダム』シリーズ最新作ということで、少しずつ浸透させながら丁寧にお客さんに広げていきたいな、というところがありました。ちょっとずつでも良いから『水星の魔女』に興味を持っていただく期間を作りたい。10月にいきなりTVシリーズを始めるより、こういう作品なんだというのを先に理解してもらう方が良いんじゃないかと思いました。予備知識的に先に観ていただくファンサービス的な面もありますね。まずは『水星の魔女』を知っていただく入り口として、もちろんこの「PROLOGUE」もそうですし、PARCOさんとのコラボレーションや各地のイベントを本編放送開始前に展開しました。

――「PROLOGUE」に出てくるGUNDフォーマットという技術は今後重要な要素になるのだろうなと思われますが、お話できる範囲で教えていただけますか?

岡本:この世界観で描くガンダム像に必要な設定という感じですね。物語を追って観ているうちに「ああ、こういうことなんだな」と分かっていただけるものになっていると思います。物語のテーマ的なところに繋がっているので、なかなか話しにくいんですが、本作で描こうとしているテーマに紐づいているのは間違いないです。

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