『水星の魔女』スレッタの性格はアムロかベルリか? ガンダムの歴代パイロットから考察
最初にアムロというネガティブな性格のヒーローを作り出しておきながら、最新の『Gレコ』でポジティブの化け物のようなベルリを繰り出す富野由悠季監督の変化は、遡れば「頼まれなくたって生きてやる」をキャッチコピーにした『ブレンパワード』で芽吹き、『∀ガンダム』のロラン・セアックで実を結んだと言える。この後に再構成を手掛けた劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation』で、カミーユのラストをテレビとは違ったものにしたのも、ネガティブに沈まない強いキャラクターにしたかったからかもしれない。
やはりスレッタはベルリのようなポジティブキャラクターなのか。そう単純に行くはずがないのが、『コードギアス 反逆のルルーシュ』で驚きの連続を見せてくれた大河内一楼が脚本を手掛ける『機動戦士ガンダム 水星の魔女』だ。鍵となりそうなのがスレッタの出自。そもそもどうして遠い辺境の水星にいたのかは、YOASOBIによるオープニングテーマ「祝福」の原作小説にもなっている短編「ゆりかごの星」に書かれている。
母親と共にどこかから逃げてきたらしい。そして母親はミオリネの父親で、ベネリットグループを率いるデリングという人物に怨みを抱き、エアリアルとスレッタに仇討ちを託したいらしい。鬱屈した過去を背負い、何かに怨みを抱きながら復讐のためにガンダムを駆るというパターンは、『機動戦士ガンダム00』で過去の経緯から戦争を憎み、戦いを引き起こす勢力を根絶やしにしようと戦う刹那・F・セイエイを思い起こさせる。
ネガティブでもポジティブでもなく、ある思惑を持ってガンダムに乗るのは、少年兵として共に戦ってきたオルガ・イツカのためにガンダム・バルバトスを駆る『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の三日月・オーガスとも重なる。逆境からの反抗というパターンをスレッタも抱えているのだとしたら、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』も少女同士の関係といった様式美には留まらない、激烈で陰惨な展開へと向かう可能性を否定できない。
過去のガンダムパイロットたちの様々なパターンを合わせ持つところがありながら、まるで読めないところもあるスレッタを主人公にして物語はどこへと向かうのか。「ゆりかごの星」に描写されているように、ガンダム・エアリアル自身が「僕」という一人称で思考するだけの自意識を持ち、「僕がガンダムだ!」と言ってすべての主役をかっさらっていくのだろうか。
物語はまだ始まったばかり。最後まで見て答えを見つけよう。
■放送情報
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
MBS/TBS系全国28局ネットにて、毎週日曜17:00〜放送中
企画・制作:サンライズ
原作:矢立肇、富野由悠季
監督:小林寛
シリーズ構成・脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン原案:モグモ
キャラクターデザイン:田頭真理恵、戸井田珠里、高谷浩利
メカニカルデザイン:JNTHED、海老川兼武、稲田航、形部一平、寺岡賢司、柳瀬敬之
音楽:大間々昂ほか
声の出演:市ノ瀬加那、Lynn、阿座上洋平、花江夏樹、古川 慎、宮本侑芽、富田美憂ほか
©創通・サンライズ・MBS
公式サイト:https://g-witch.net/
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