『鎌倉殿の13人』は“器”を問う物語に “そうするしかなかった”人物たちが生む悲劇

『鎌倉殿の13人』は“器”を問う物語に

 政子の「そうするしかなかった」については、『「鎌倉殿の13人」応援感謝!ウラ話トークSP~そしてクライマックスへ~』(NHK総合)で三谷幸喜自身も「その都度その都度、彼女は必死だったし、そうでなければいけない……母として妻として、その選択をしていっただけであって、それが結果的に悪女の烙印を押されてしまったのかもしれないけれど」と語っている。

 政子とて、頼朝に会って思いを寄せただけで、こんなところまできてしまった人物である。教養を得ることにあまり関心がない人物であったが、それでも彼女には「器」がないわけではない。その「器」というのは、彼女のフェアなところにあるように思える。彼女も先述のように、「そうするしかなかった」ことの連続の人生ではあったが、「そうするしかなかった」ことが起こった後には、彼女は対話をするのである。

 頼朝との間に子供を生んでいた八重がいるのに、頼朝と生きていくこととなった政子は、八重と対話をするし、頼朝の愛妾となった亀(江口のりこ)の家を「後妻打ち」という都の慣習で壊した後も、亀と対話した。自分たちを陥れようとした継母のりく(宮沢りえ)が鎌倉を離れる前にも対話をする。この対話で、「そうするしかなかった」お互いの状況を知り、わだかまりを解くのである。この「対話」がなければ、政子も簡単に悪女と見られていただろう。彼女は「そうするしかなかった」ということに抗っている人物だったとも言えるのかもしれない。

 こうした「そうするしかなかった」の連続で描かれてきたこのドラマ。「そうするしかなかった」ということは、自分の意思や野心がモチベーションではなく、本人にも計り知れない何かの力に動かされているのであり、それをコントロールできないからこそ、せつなさや悲しみを生んできたのだろう。きっと最終回でも、「そうするしかなかった」と思わせる結末が見られるのではないだろうか。

■放送情報
『「鎌倉殿の13人」 応援感謝!ウラ話トークSPディープバージョン』
10月18日(火)NHK総合にて02:11〜3:11放送(※月曜深夜)
トークゲスト:小栗旬、小池栄子、坂口健太郎、坂東彌十郎、佐藤二朗
MC:佐久間宣行(テレビプロデューサー)、杉浦友紀アナウンサー

『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる