『舞いあがれ!』第1週から感じた多様性の本質と現代性 『あまちゃん』との共通点も

『舞いあがれ!』と『あまちゃん』の共通点

  “朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』がはじまった。第1週「お母ちゃんとわたし」では東大阪の町工場を営む家庭に生まれた舞(浅田芭路)が原因不明の発熱を克服しようと母・めぐみ(永作博美)の故郷・五島列島に向かう。

 舞がおとなしいキャラのためゆったりした雰囲気ながら、1週間で、東大阪の舞の家の事情、舞の状況、五島列島行き、めぐみと彼女の母で舞の祖母にあたる祥子(高畑淳子)の確執、舞の発熱の原因、舞だけ残してめぐみが東大阪に戻る、と一連の話がスピーディに話が進んだ。

 展開は早いが、ポイント、ポイントで心情やディテールがしっかり描かれていて、取りこぼさない。例えば、めぐみが台所で泣き崩れたあとにシンクの前の床に直座りして夫婦で語る場面や、五島に戻ったとき、まず仏壇にお参りする場面など。舞が靴を脱いだあと揃えることはSNSで絶賛されていた。

 おとなしく自分の意見を言えない舞にそっと気を配る幼なじみの貴司(齋藤絢永)や五島列島で出会った少年・一太(野原壱太)、そして祥子のまなざしにホッとする。なんといっても、舞の父・浩太(高橋克典)。駆け落ち同然で故郷を捨てて東大阪で生活してきためぐみと故郷の母の関係を気にして、めぐみには内緒で家族の写真付きのはがきを送り続けていた。

 何年も音信不通にしていたつもりが、祥子はめぐみの生活を知っていたのである。「だいじょうぶ、ほら見ている」とはこういうことだろう。

 母の故郷に帰るところから物語がはじまるといえば朝ドラ『あまちゃん』がある。『舞いあがれ!』は『あまちゃん』と同様に、都会の生活では引っ込み思案だった主人公が田舎の風景や人々と触れ合うことで元気になり、一方、母は断絶していた家族との確執を少しずつ溶かしていく。田舎が海の町であることも同じだ(方角が全然違うが)。前作が沖縄を舞台にした型破りな作品であったことも同じである。ただ、来年放送10年になる『あまちゃん』を意識しているか定かではない。

 過去の朝ドラ作品のオマージュは朝ドラにはよくあることで、『あまちゃん』に限らず、祥子が大事にしている亡くなった夫のラジオが『ひよっこ』の主人公が作っていたラジオであることもSNSで話題になっていた。祥子がいちごジャムを大きな鍋でぐつぐつ煮ているのは『カムカムエヴリバディ』のあんこを思わせる。オマージュ探しも楽しいが、ここでひとつ興味深いことがある。『あまちゃん』のときは主人公アキ(能年玲奈/現・のん)の目線が主軸になって、あとあと、母・春子(小泉今日子)の物語も描かれていくのだが、『舞いあがれ!』では第1週で主人公の母・めぐみに重きが置かれて見えることだ。『あまちゃん』では子役が出ないという事情だけではない気がする。

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