『舞いあがれ!』第1週から感じた多様性の本質と現代性 『あまちゃん』との共通点も

『舞いあがれ!』と『あまちゃん』の共通点

 子供時代、成績優秀でがんばり屋だっためぐみは、結婚してからもがんばり精神を発揮して、家事と育児と工場の手伝いをしてきたが、社員がひとり辞めて以来、仕事が増えて手に余るようになっている。それでも決して弱音をはかず、笑顔でやりきろうと努力している。その必死さが顔に出ているのは永作博美の名演技。

 がんばり過ぎるひとは往々にしてがんばることを第一にしてまわりが見えなくなってしまいがち。例えるなら、風邪をひいても休まないことを良いことと思いこみ、周囲に移すかもしれないことを、思いを致せないようなこと。

 頑張り過ぎて自分の価値観を他者におしつけてしまうめぐみの癖は、長男・悠人(海老塚幸穏)が受け継いでいるようで、めぐみは「自分のことばっかり考えてたらあかんよ」と諭す。じつは自分にもそんなところがあることに気づけていないのだ。

 舞はめぐみの言うことにいっさい反抗しない。反抗したらめぐみのアイデンティティが崩壊することがわかるからだ。自分の考え方や行いが正しいとめぐみが満足できるように言うことを聞く。それによってじわじわとストレスが溜まっていく。子役にもかかわらず複雑な心理を的確に表現している浅田の名演技。首が長くて時々大人っぽい表情を見せることもあるがすこし首をすくめうつむき気味で気の弱さを表しているところも大人顔負けだ。

 舞が他者のことを気にしがちなのは母に限ったことではない。飼育係をやりたいけれど、すでに決まっている久留美(大野さき)に気を使いもじもじする。それに貴司が気づいて助け舟を出してくれる。五島では祥子が、めぐみが母に気を使って言いたいことを我慢していることに気づいて、本音を口にするよう働きかける。

 たった1週間で、主人公の悩みも、母の悩みも描いているのは、視聴者がどちらかといえば、めぐみの立場であることも大きいだろう。母だって、家庭も仕事も両立させること、子育ての悩みなど、たくさん悩んでいる。そして、子供は子供で、そんな親のことを考えて悩んでいる。互いが互いを思うことで結果的にどちらもストレスになってそれが身体にも影響を及ぼしている。母と子の問題を対等に描いているところに多様性の本質と現代性が見える。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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